[特集:デジタル関連法案⑩] 秘匿性される個人情報取扱いは現状維持


犯罪捜査等、安全保障分野などの個人情報ファイルを秘密とする仕組みは残る

 前述もしましたが、改正個人情報保護法案により、現在、各行政機関が個人情報ファイルを保有する際にあらかじめ総務大臣に通知するとしているものを、個人情報保護委員会への通知となります。

 また、通知対象となる個人情報ファイルは「個人情報ファイル簿」に、ファイル名や利用目的、記録されている個人情報の項目、所管課などを記録して公表するという現在の仕組みは変わりません。

 しかし、これらを要しない場合の例外が現行制度でも定められています。それが犯罪捜査等、外交・安全保障分野の個人情報ファイルです。法改正後も個人情報保護委員会に通知されず、ファイル簿も公表されることはありません。何をしているのかは個人情報保護委員会も把握しないので、監督・監視しようにも何もしない(できない)分野です。監視活動を行う犯罪捜査、公安活動、インテリジェンス活動を第三者的に監視する機能がないという状況が、監視社会化への懸念につながるわけですが、あえてここは手を入れない。

 情報公開クリアリングハウスは、警察庁に秘密個人情報ファイルを内部管理するために作成されているファイル簿の情報公開請求を行い、内容が不開示になったため情報公開訴訟を係争中で、この秘密にできるファイル情報を何とか情報公開させようと試みているところです。また、この訴訟を提起する前に、具体的にDNA、指紋などと個人情報ファイルを特定して情報公開請求したところ、秘密個人情報ファイルのはずがファイル簿の多くの部分を警察庁が開示しており、すべての情報を秘密にする必要があるわけでもないこともわかっています。

 ある程度の秘匿性が必要なことは理解しているものの、一律に犯罪捜査等、外交・安全保障分野に該当すると秘密にするという仕組みやはり問題が多く、誰を捜査しているか、誰を監視しているのか、誰の情報収集をしているのかといった個別の情報ではなく、どういう類型の個人情報ファイルや個人情報の収集を行っているのかは、一定の情報公開が必要ですし、個人情報保護委員会などによる監視が必要です。

 これは、前述のとおり、デジタル技術や個人情報の利用や方法は、利用する組織や利用の目的によって意味が変わってくるだけで、基本的には同じ技術や個人情報であるという前提で、どのように民主的にコントロールし、監視して説明責任を果たすか、ということでもあります。

 なお、どのような経緯で犯罪捜査等、外交・安全保障分野の個人情報ファイルを一律に秘密にするような仕組みになったのかは、情報公開訴訟で陳述書にまとめて証拠提出をしていますので、関心があったらお読みください。 (文責:三木由希子)

 


 

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