政治資金規正法改正 「政策活動費」の使途公開って意味あるのか?

<シリーズ 政治資金規正法はなぜ透明性を確保できないのか②>

 
 5月9日に報道された政治資金規正法改正に関する自民・公明党の合意内容には、「いわゆる政策活動費の使途公開」という項目があります(なおその後、自民党は単独で改正法案を出すとの報道があります)。

 「政策活動費は、支払いを受けた者が使途を報告し、収支報告書に記載」とするもので、一見それっぽい改正内容なのですが、実は何をどこまで変えようとしているのかよくわからないものです。

 

そもそも政策活動費とは何か?

 
 いわゆる「政策活動費」とは、政党・政党支部から国会議員に行われる寄付について、政党・政治団体側がつけている「名称」です。「政策活動費」という名目で支出され、2022年の政治資金収支報告書によると、自民党が14億円超、立憲民主党が1億円、国民未種等が6800万円、社民党が「組織活動費」として700万円、日本維新の会は政党支部から5057万円を所属の国会議員に支出したとされています。

 額の大きい自民党は、茂木幹事長に2022年だけで9億円超を「政策活動費」として支出。幹事長の在任期間の長かった二階俊博氏は、2016年から2021年にかけて約47億7千万円を受け取ったとされています。
 
 いずれも非課税で使途の公開もなし。使途の公開がされないことが問題になったため、与党合意ではその使途を公開することとしているのですが、そもそも「政策活動費」とは何なのか。ここに立ち返ってこの合意内容を考えてみる必要があります。

 

政策活動費はなぜ非課税?

 
 まず、非課税であるという点です。「政策活動費」という名目で国会議員個人に支払われているものは、政党・政党支部から国会議員個人への「寄付」だとされ、だから非課税という扱いになっています。「政策活動費」やという名称に政治資金規正法などの根拠があるわけではなく、各政党などがつけている支出費目に過ぎません。

 では、国会議員に政党・政党支部から寄付ができるのかが、二つ目の論点です。

 政治資金規正法は、国会議員などの公職の候補者個人に対して政治活動のための寄付をすることを禁じ、政治団体に寄付することを義務付けていますが、例外が二つあります。一つ目は、選挙運動にかかる寄付は国会議員などの公職の候補者個人に対して行うことができるということです。これについては、「選挙運動費用収支報告書」で報告され閲覧に供されます。二つ目が、政党による国会議員などの公職の候補者個人への寄付は、例外としてできるとしていることです。

 国会議員など公職の候補者個人への寄付が原則として禁止されたのは、1994年の政治資金規正法改正です。換言すれば、それまでは国会議員などが個人で政治活動にかかる寄付を受け取ることができたということです。

 では、以前はどのような仕組みだったのか。

 

議員個人の手元で管理する資金の報告制度

 
 政治資金規正法は何度か大きく改正がされていますが、1994年より前は次のような仕組みになっていました。

① 国会議員ら公職の候補者が個人で寄付を受けた場合、指定政治団体に寄付をすれば指定政治団体が収支報告書で報告する

② 国会議員ら公職の候補者が個人の手元で寄付などの金銭等(保有金)を扱う場合は、個人として「保有金の収支報告書」を作成して提出する

③ ②に記載される寄付等から、政党及び指定団体からの寄付は除かれる

 「指定団体」とは、国会議員ら公職の候補者が後援団体の中から自らの政治資金を取り扱う団体として指定し、届け出られたものとされていました。現在の「資金管理団体」に近いものです。かつては国会議員ら公職の候補者個人に対して、政治活動に関する寄付を行うことが規制されず、①・②に該当する場合は「政治資金収支報告書」や「保有金収支報告書」を作成して公開、ただし政党や指定団体からの寄付は使途の公開を要しないとしていました。

 1994年の政治資金規正法の改正で、国会議員ら公職の候補者個人が政治活動にかかる寄付を受け取ることが原則禁止されたので、個人の手元に残る「保有金」の収支を報告する仕組みはなくなりました。しかし、政党から個人への政治活動にかかる寄付の仕組みは残り、それを報告する仕組みを設けられませんでした。

 政治資金をめぐる問題の一つとして、政党→国会議員個人への寄付については不透明さを維持させてきたことになります。これが「政策活動費」という名称で巨額の資金が国会議員個人にわたる仕組みとして、今も残っているものです。

 

政党から国会議員個人への寄付の仕組みを残すのか?

 
 では、与党の政治資金規正法改正合意として報道された、「政策活動費」の使途の公開は意味があるのか。意味はありますが、その前に政党から国会議員個人への寄付という仕組みを残すのかについての態度表明が必要です。

 例えば、「政策活動費」として前払いしたものを後で精算するという場合は、政党として支出するべきものを支出しているといえるので、政策活動費は寄付ではなく、前渡金のような扱いになります。「政策活動費」は政治資金規正法に定めはなく、今は「政策活動費」という費目で国会議員個人に「寄付」として巨額の資金を渡しているというだけなので、「政策活動費」という名目で支出するものが、前渡金なのか寄付なのかを明確にして議論すべきです。

 使途の報告を受ける場合、政党として支出すべきものを各国会議員が代わりに執行しているのか、寄付だけど報告を受けるのか。「政策活動費」の使途を公開するといっても、「政策活動費」という名目以外で寄付ができる仕組みが残れば、新たな不透明な資金の迂回路ができるだけです。「政策活動費」の使途の公開という議論は、この点についての態度を明らかにしているわけではないわけです。

 だから、政党から国会議員ら公職の候補者個人に寄付ができる規定を廃止し、政治団体以外での政治資金の受け取り、支出を禁止すべきではないのか、と考えるわけです。

 使途を報告するにもかかわらず、あえて、政党から国会議員個人に政治活動にかかる寄付ができる仕組みを残すのか。もしあえて残すなら、国会議員個人が政治活動に関する寄付を扱うことができることの必要性と意味は何か。このことの説明が必要でしょう。

 

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