情報公開クリアリングハウスは3月30日、警察庁が不開示とした個人情報ファイル簿の公開を求める訴訟を東京地裁に提起しました。
1988年に制定された行政機関個人情報保護法は、2003年に大幅な改正を行っていますが、一貫して外交・防衛・治安維持に関して保有される個人情報ファイルについては、その存在を秘密とする規定を設けています。国の行政機関が保有する個人情報ファイルについては、保有する前に事前に総務大臣に通知し、ファイルの名称、記録される個人情報の項目、個人情報の利用目的などを「個人情報ファイル簿」に登録し、公開することを求めていますが、その例外とされてきています。
誰の個人情報を登録しているのかではなく、どのような業務類型で個人情報ファイルを保有しているのかを明らかにするこの仕組みは、個人情報の取り扱いに関する透明性の確保、滴定性の確保を公開と監視を通じて行うものとして従前から存在していますが、外交・防衛・治安維持分野については公開の義務はなく、どのような個人情報ファイルを保有しているのか、存在そのものが秘密とされてきています。
情報公開クリアリングハウスは、1988年の行政機関個人情報保護法の制定段階で、その前身の団体がこの秘密個人情報ファイル問題については問題意識を持ち、改正の必要性を意見として述べてきています。今、特定秘密保護法、盗聴法の改正、共謀罪と監視社会化が懸念されている中で、そもそも個人情報ファイルの存在自体秘密とする、行政機関個人情報保護法の規定を変える必要性は一層高まっていると言えます。
そこで、2014年頃からこの秘密個人情報ファイル簿問題を、法改正はすぐには難しいとしても、情報公開請求を通じて明らかにすることを考え、試行錯誤しながら情報公開請求をしてきました。2016年に行った情報公開請求で、警察庁が122件の秘密個人情報ファイル簿を保有しているところまでは確認できましたが、どのような個人情報ファイルであるかは一切非公開となりました。
非公開決定に対して審査請求を行いましたが、情報公開・個人情報保護審査会は非公開妥当と答申しました。その大きな根拠となるのは、行政機関個人情報保護法で秘密とすることができるものであることから、公にすると外交・防衛・治安維持上の支障が生ずる情報であるということでした。その後、2017年10月2日付で、審査請求を棄却する裁決書が警察庁から届きました。
次に行ったのは、警察庁の保有しているであろう個人情報ファイルのうち、存在が明らかにわかるものについて個人情報ファイル名をあ櫐程度特定し(DNA型、指紋、掌紋、顔認識など)、情報公開請求を再度行いました。そうしたところ、今回はほぼ公開されました。個人情報ファイル名や個人情報の登録項目など、一部は非公開とされましたが、多くの情報が公開されました。この決定が出たのが今年の3月に入ってからです。
※左がファイル名を特定しなかった場合、右がある程度特定した場合。両者は同じ個人情報ファイルのものではありません
現状、個人情報ファイル名を特定しないで情報公開請求すると非公開、ある程度特定して請求するとほぼ公開、という、情報公開請求に対する決定が分かれる結果となりました。この判断の違いは、個人ファイル名の特定の有無以外に原因は考えにくいところですが、なぜ、このような判断の違いになるかは情報公開法の解釈上、大きな問題であると考えています。
そこで、ほぼ非公開とされた個人情報ファイル簿について、出訴期限が迫っていましたので、急遽、情報公開訴訟を提起し争うことにしました。審査請求で非公開妥当との裁決が出ていますので、この先は、訴訟しかないからです。現在、18件の個人情報ファイルは、ファイル名を特定したことで情報が公開されいますが、100件以上がまたその存在自体を秘密としたままです。行政機関個人情報保護法の改正も視野に、改正ができなければ情報公開請求によって事実上の公開を実現するため、情報公開の実現をめざして訴訟に取り組みます。
なお、この訴訟は、公益社団法人自由人権協会の公益訴訟チームの支援を受けて行っています。
記者会見資料_警察庁秘密個人情報ファイル