[特集:デジタル関連法案⑱] 日常のコミュニケーションにLINEを使うとそれは公文書か?

 
 LINEは行政内部の日常的なコミュニケーションに使われていることもあります。使われ方は二通り。一つは、個人のアカウントを利用して日常業務連絡などで利用している場合。もう一つが、行政機関としてLINE社やそのほかのチャットアプリと契約して利用している場合です。

 前者の場合は、個人のスマホなどで利用していたりするので、行政組織として貸与したスマホを使っていない限り、どうやってもそのままだと公文書にはならない。組織的に貸与しているスマホであっても、おそらく個人アカウントだとかなり厳しい。一方で、組織として契約して利用している場合は、普通に考えれば公文書に該当するだろうと思われますが、自治体によってその扱いがまちまちであることが読売新聞の取材で分かっています。

 チャットアプリのうち、一部の自治体が利用しているLINEワークスは導入事例として自治体が紹介されているので、それを手掛かりにして自治体ごとに確認した結果、導入が分かっていた自治体のうち、大阪府、大阪市、京都市は通信内容を公文書として管理の対象にしていました。新型コロナ対応に関する大阪市の通信内容が情報公開請求により公開されており、市長と幹部の協議に活用されていることが分かっています。

 岩手県は、通信内容をまとめたものを公文書として管理し、神奈川県、愛媛県、静岡県浜松市、東京都杉並区、北海道美瑛町は公文書ではないという位置づけになっていたとのことです。神奈川県は「補助記録」を公文書外とする規定が情報公開条例とその規則にあり、浜松市は公文書の定義のうち行政機関による「保有」の解釈に形式的な用件を設けていることが原因ではないかと思われます。

チャットは公文書なのか?…自治体で活用急拡大、ルールまちまち(読売新聞 2021/3/6)
 
 一方で、国では個人アカウントの利用が蔓延していることは、2018年5月1日に毎日新聞が報道しています。政府のメールサーバに残るのを嫌って、私用メールアカウントを使っていたり、LINEを利用していたりと、政務三役が率先して公的に記録されないようにコミュニケーションをとるという状況自体が異常ですが、これを公文書とするには、公文書の定義を変えるか、私用アカウントの利用を禁止するしかないないですね。

 禁止か、利用は継続するが説明責任が担保されるように仕組みを作るか、何もしないかという選択肢がありますが、日本ではLINEに限っては中国からの閲覧問題で一時的に禁止になったわけで、この際、情報セキュリティと公文書の管理の両面から何か整理ができないのだろうかと思います。(文責:三木由希子)

 


 

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