[特集:デジタル関連法案⑭] 公務員の贈与等報告書、政治家の資産公開など閲覧のみの文書たち

 
 総務省の幹部がNTTや東北新社の関連会社から接待を受けていたことが明らかになり、公務員倫理が問題になりました。

 国家公務員倫理法は、利害関係者から5千円超の贈与を受けた場合は職員に行政機関の長などへの報告を義務付け、2万円超の贈与であった場合は閲覧に供することとしています。総務省幹部への接待問題も、適切な報告がなされていれば、この閲覧対象になっていたものです。

 しかし、国家公務員倫理法は、贈与等報告書のうち2万円超のものは「閲覧」しか規定をしていません。「閲覧」には写しの交付を含まない(最高裁判決)となっているので、ウェブサイト上での公開など今は行っていません。そのため、直接各行政機関の庁舎に言って閲覧をするか、あるいは情報公開請求をして写しの交付を受けるかのいずれかの方法をとる必要があります。「閲覧」規定のみのためにこのようなことになっており、公開されているもののアクセスが困難=監視が弱くなるという問題が起こっています。

 国家公務員倫理法で「閲覧」ではなく「公表」とすれば、オンラインでの公表・公開も割と簡単にできるはず。閲覧しか規定がなくても、裁量的に公表・公開もできるはず。デジタル化による情報の利活用を進めるなら、行政にとっても厳しい部分での情報流通も積極的に行わないと、自分に甘いだけということになります。

 同じように自分に甘いということになりかねないのが政治の世界。年額で317億円が各政党に交付されている政党交付金。その使途は「政党交付金使途等報告書」にまとめて総務省や都道府県選挙管理委員会に報告されています。しかし、この「報告書」も政党助成法では「閲覧」しか規定がない。総務省は、オンラインで報告書を提供していますが、閲覧規定しかないので閲覧はできるものの、ダウンロードやプリントアウトができない仕様になっています。都道府県では、オンラインでの提供は基本的にしていません。同様のものとして、選挙運動費用収支報告書があります。これも閲覧規定のみ。

 そして、国会議員資産公開法も同じです。①資産等報告書、②資産等補充報告書、③所得等報告書、④関連会社等報告書 が毎年各国会議員から提出されていますが、これも法律上は閲覧のみ規定がされています。そのため、衆参両院のウェブサイトを見ると、閲覧場所が指定されておりそこに行かなければ閲覧はできない。

 これらはいずれも、公務員倫理や政治倫理を一般の監視の下におくことで確保しようという制度であり、庁舎に行かないと閲覧できない、情報公開請求しないと写しが受けられないという制度はそもそも監視力を弱めることにしかならないわけです。かつて政治資金収支報告書も閲覧規定しかありませんでしたが、2007年の政治資金規正法の改正で「公表」規定を入れることで、ウェブサイトでの公表が行われるようになりました(一部の都道府県では対応していません)。政治資金規正法は、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」ことを目的としており、監視されやすい仕組みにしたわけです。同じことは、政治資金規正法以外でもできるはず。政治の責任の問題でもあります。(文責:三木由希子)

 


 

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