行政手続オンライン化法、住民基本台帳法、公的個人認証法、マイナンバー法等を改正する「デジタル手続法」が成立したのが2019年5月のことで、これにより行政手続はオンライン実施を原則とすることになりました。
デジタルファースト(個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結)、ワンスオンリー(一度提出した情報は、二度提出することを不要)、コネクテッド・ワンストップ(民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現)が基本原則とされました。
また、行政手続オンライン化法で策定が義務づけられている「情報システム整備計画」を、2018年に最初に策定されたデジタル・ガバメント実行計画(最新版は2020年12月25日改訂)を2019年に改訂して閣僚会議決定から閣議決定にしてこれに組み込み、デジタル化を進めてきました。2020年11月には、電子政府のポータルサイトであるe-Govが更改されましたが、電子申請システムも更新されて以前に比べて使いやすいものになっており、申請の多い手続など優先順位を決めてオンライン手続の範囲を広げていくことになっています。デジタル関連法案はこうしたインフラ整備の標準化・迅速化をするものでもあります。
しかし、情報公開請求のオンライン化は今のところ進む気配がありません。行政手続オンライン化法は2002年制定の法律で、2003年度中に相当数の行政手続のオンライン化がいったん行われます。この時、情報公開請求手続もオンラインでできるようになりましたが、これが大変ひどい出来だったわけです。情報公開請求に限らず各省庁が独自に申請システムを作っているため、そもそも省庁をまたいで様々な手続に使われるという発想は皆無。省庁ごとに同じアプリケーションでもバージョンが異なるうえ、一つ一つの省庁のシステムが利用できるまでにとにかく時間がかかる。また、国に対する情報公開請求は手数料の納付が必要ですが、電子的に納付できるところと、別に郵送で収入印紙を送付しなければならないところなど実はまちまちなど、使う側がただただ消耗する代物でした。
筆者の知る範囲でも、オンライン情報公開請求ができるようになってすぐに使ってみた人が結構いたのですが、端的に言えば郵送で手続きをすれば5分で終わるものを、30分、1時間かけないと使えないということで、早々に利用するのをやめてしまいました。情報公開クリアリングハウスでは、2004年に当時オンラインで情報公開請求ができた省庁のシステムをすべて使い、実際にどのようなシステムで問題があるのかをまとめたレポートを作成しました。結論的には、二度と使わない。
使い勝手の悪さと、郵送で手続きをした方が圧倒的に楽という状況に、オンライン情報公開請求をする人がどんどん減っていきます。残ったのは、特定の省庁に繰り返し同じ類型の情報公開請求をする商業利用目的の請求の多い、厚生労働省と国土交通省のオンラインシステムと、一般の行政手続による申請の受付がほとんどない人事院、内閣法制局、宮内庁、会計検査院のオンラインシステムでした。
行政手続には、厳格な本人確認が必要な手続、本人確認を要しない手続があり、自己情報の本人開示請求は前者、情報公開請求は後者に当たります。多くの行政手続は申請者が誰であるのかという本人確認が必要であるため、本人確認を要する申請と同じシステムに組み込まれると、情報公開請求では本人確認は行わないとしても、システムそのものは重たい仕組みになる。そしてみな使わなくなる。一方、一般の行政手続による申請がほとんどないところは、別に簡易なオンラインシステムを作って情報公開請求の受付をしているため、そのままの残ったということだと思います。
その生き残っているオンライン請求も、人事院はこの間のe-Govのシステム更改の時期に、オンライン請求のシステムを停止。確認したところによると、すぐに再開できる状況にはないとのことでした。人事院はオンラインでの請求件数の多いところで、デジタル化の波の中で逆にオンラインが使えなくなってしまいました。
また、オンライン請求ができる内閣法制局、宮内庁、会計検査院のいずれもオンラインで請求書を出せるものの、開示請求手数料は郵送で納付であるので、オンラインで完結をするわけではないものです。残る厚生労働省と国土交通省は、他の行政手続と同じオンラインシステムで情報公開請求の受付も行っており、こちらは手数料の電子納付まで当初から可能でした。
デジタル手続法案後も、情報公開請求はオンライン化がまだ進んでいない。さらに問題なのは、デジタル文書の写しの交付手数料が紙でコピーするより高額になるという問題が残っています。(文責:三木由希子)
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