[特集:デジタル関連法案⑪] 本人開示請求ができない個人情報がある

 
 行政機関個人情報保護法や都道府県個人情報保護条例には、開示請求がそもそもできない類型の個人情報に関する規定があります。それが、刑事事件・少年事件に係る処分、刑・保護処分の執行、更生緊急保護・恩赦に係る個人情報で、本人からの開示請求権等の適用除外にしています。

 例えば、刑事事件等に係る自己情報を開示請求しようとてもできない、拘置所に未決囚として収容されている間の処遇等に関する記録の開示請求ができない、刑務所に収監中の医療記録の開示請求ができない、といったことが生じます。これまでも、開示請求権の適用除外として拒否決定がされた案件が、審査請求や訴訟で争われてきましたが、いずれも法が開示請求権の適用除外としているため請求が認められていません。

 なぜこのような規定を設けているのかという理由は、本人の不利益になるからと説明されてきました。具体的には、該当するような個人情報は、刑事事件の当事者である、あるいは刑務所に収監されていたなどを前提として作成されるものなので、開示請求の対象とすることで、特定の個人が刑事事件の当事者や受刑者であったということを明らかにし、受刑者等の社会復帰上又は更生保護上問題になるから、と説明されています。単純化して言うならば、開示請求をさせて不存在なら被疑者であったことや刑を受けたことがない、何か文書があれば該当することがわかるので、開示請求の対象とすること自体が社会復帰や更生を妨げるということです。

 こうした情報は取得・収集しようとする側に対して、本来収集を禁止すべきで、だからこそ、要配慮個人情報(自治体だとセンシティブ情報)の原則収集禁止のような規定を個人情報保護法制で設けるべきでしょう。また、就労の際にこうした情報を収集すること自体、労働法制の枠組みに照らせば不法なのではないかと思うのですが、過去30年間、まったく制度が変わりません。

 ただし、最近気づいたのですが、本人開示請求はできないものの、行政機関個人情報保護法には本人が同意するか本人に提供する場合は、個人情報を外部提供できるという規定があり、法務省などはこの規定を根拠に刑務所等が開示請求できない個人情報の一部を本人や関係各所に提供していました。提供されていたのは刑務所での領置金等に係る基帳記録、医務診療記録、被収容者身分帳簿などで、最も多く外部提供として本人に提供されていたのは被収容者身分帳簿の一部でした。この場合、どのように利用するのかなど個別に確認し、必要な部分のみ提供するという方法で対応をしているようです。

 しかし、これで提供されない個人情報はやはり開示請求によらなければならないので、適用除外とされていることでアクセスが拒まれていることには変わりありません。全くアクセスできないわけではないが、権利としてはアクセスできないということが果たしてよいのかという問題は残りました。(文責:三木由希子)

 


 

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