[特集:デジタル関連法案⑨] 地方議会に適用されない改正個人情報保護法案

 
 自治体の個人情報保護条例では、地方議会も実施機関の一つとして適用しているもの、議会独自の個人情報保護条例を制定しているものがあり、両方合わせるとほぼすべての自治体で議会に対して適用される個人情報保護条例があります。

 ところが、国では国会は行政機関個人情報保護法の対象になっておらず、それにあわせて、改正個人情報保護法案では地方議会を適用除外にしています。これまで個人情報保護条例の適用を受けて、個人情報の取扱いについて制限を受けてきた地方議会は、議会として独自の個人情報保護条例を制定しているところを除いて、個人情報の取扱いの法的規制を受けなくなります。

 地方議会と個人情報保護の関係を紐解いてみると、記憶に新しいのが情報公開請求者の漏えい事件。各地で政務活動費の情報公開請求が出され、不適正支出が発覚しましたが、その過程でたびたび報道されたのが、情報公開請求者の情報を議会事務局が議員に漏らしていた、議会内で共有していたという問題でした。

 相次ぐ問題に対し、総務省自治行政局長が「政務活動費に係る対応について」(2016年9月30日)で、「開示請求者の個人情報等は当該情報を知る必要のない者にまで情報提供、共有することがないよう、留意する必要があります。また、個人情報保護の観点からも、開示請求者の個人情報の適正な管理が要請されています」と通知するに至っています。
 
 総務省通知は個人情報保護条例との関係には言及していませんが、自治体で問題になったのは個人情報保護条例との関係でした。請求者情報を議員に漏らすのは、目的外利用で条例違反が疑われる、議会内で請求者情報を共有するのが、個人情報の保有目的を超えた利用ではないか、ということが批判されました。ところが、議会は個人情報保護に関する法令の適用を受けないとなると、「道義的責任」といったレベルになってしまいますね。

 改正個人情報保護法案によって個人情報保護の法的義務を免除される地方議会は、良識があるなら議会としての個人情報保護条例を制定すればよいのですが、どう対応するでしょうか。なお、国会は改正個人情報保護法案の適用対象にはなっていませんので、地方議会に適用させるなんて言う修正なんてできませんよね。自らに甘く地方議会に厳しいなんて、ブラックジョークにしかなりませんから。(文責:三木由希子)

 


 

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