自己情報の本人開示請求に対しては、原則開示されなければなりませんが、例外として不開示とする場合が定められています。この不開示規定も、行政機関個人情報保護法と基本的に同じものを自治体にも適用することになります。中でも、自治体の条例と形式的な部分で異なるのが、公務員氏名の開示範囲です。
開示請求する個人情報の中には、自分以外の個人情報が含まれていることもあり、そのよくあるものとして公務員の氏名があります。自治体では、公務員情報の場合は、職務内容に関するものであれば個人情報であっても氏名も含めて原則開示としているものが多いです。
一方、国の場合は、公務員情報については職と職務内容については個人情報であっても原則開示としているものの、氏名は原則開示としていません。公表慣行のある場合に限り公務員の氏名を開示するという定め方をしており、改正個人情報保護法案はこの不開示規定をそのまま自治体にも適用することとしています。
そうすると、個人情報保護条例では開示をしていた公務員の氏名が、これまで通りに開示できるのか、という問題が出てくることになります。公務員の氏名は法令や慣行として本人が知っているか、知ることが予定されている場合に限って開示ができるということになりますので、「法令や慣行」が国や自治体ごとにバラバラに解釈して適用するって考えにくいですよね。
なお、自治体の情報公開条例と国の情報公開法でも公務員の氏名の開示については同様の問題があり、自治体では国家公務員であっても職務に関することであれば氏名は原則公開されますが、国の場合は法令や慣行として公にされている場合にのみ氏名を公開しています。自治体職員の氏名が国の文書に含まれている場合、申請請求等で争われれば、当該自治体の情報公開条例で開示される情報か否かなどが争点になり、氏名開示が求められる場合もあります。
しかし、改正個人情報保護法に不開示範囲を統一化すると、本人開示請求の場合は公務員氏名の開示範囲が統一化されますので、情報公開制度では起こるようなこのような判断はもうできないかもしれません。
結論。このまま放っておくと、自治体では開示される公務員の氏名は不開示になるかもしれない。そうか、改正個人情報保護法案は、公務員の個人情報を保護するためのものだったのか!(皮肉です)(文責:三木由希子)
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