改正個人情報保護法案では、行政機関等に対する自己情報の開示請求に対する決定期限を30日とし、30日以内に決定できない場合は60日の延長が可能。さらにそれでも決定ができない場合はさらに延長ができる特例延長も定ています。現行の行政機関個人情報保護法と同じです。
自治体の個人情報保護条例はどうかと言えば、請求に対する決定期限は2週間と国の半分。決定期限の延長規定は通常設けられており、特例延長規定のある自治体もありますが、あくまで決定期限は2週間。改正個人情報保護法案はその倍の期間をかけてもよいということにしています。改正法案が成立・施行されると、何もしない自治体は請求に対する決定期限がこれまでより長期になりそうです。
なお、改正個人情報保護法案108条は、法に反しない限り条例で開示請求等の手続について必要な規定を定めることを妨げないとしています。手続」なので、決定期限も含まれるようには思いますが、どこまでが許容範囲になるのでしょうか。期限を30日から2週間と短くするということも、「法に反しない」ということになるのでしょうか。明らかに、30日を超える期間を設定すると「法に反した」と言えますが、短くすることは、個人の権利利益を強化することになるので法に反しないようには思いますけど…
行政機関個人情報保護法は、保有する個人情報が誤っている場合の訂正請求、違法に個人情報が取り扱われている場合の利用停止請求を権利として保障していますが、いずれも、法に基づく開示請求を行い開示された個人情報のみ権利の対象としています。不開示になった場合はもちろん、開示請求によらずに把握した問題についても権利が行使できないという仕組みです。
以前に、警視庁の国際テロ捜査の一環としてイスラム教徒であることだけを理由に監視活動を行っていたことを示す情報が流出した事件がありました。特定秘密保護法につながる情報保全に関する議論が再燃したきっかけの一つになった事件で、情報流出に対して損害賠償請求の訴訟が提起されました。
裁判の中で警視庁は流出した情報が内部情報であることまでは認めていますが、警察により収集された情報か否かは明らかにしていません。仮に本人開示請求がされたとしても、開示されない情報、あるいは存否を明らかにしないで拒否をする個人情報だと思われ、こうした案件では、訂正請求も利用停止請求も行政機関個人情報保護法ではできません。これは改正個人情報保護法案でも同じです。
一方で、一般的とまでは言えませんが自治体の中には、本人開示請求により開示された個人情報に限定しないで、訂正請求や利用停止請求を認めている場合があります。こうした自治体では、改正個人情報保護法案が適用されると訂正請求や利用停止請求の権利行使は事実上制限されることになります。
なお、民間を対象にした個人情報保護法は、訂正請求権・利用停止請求権を保障しており、かつ、開示請求により開示された個人情報に限定する規定にはなっていません。改正個人情報保護法案でもこれについての改正は行われていません。公的機関は開示請求により開示された個人情報のみ対象、民間はそれに限定されないということになっています。(文責:三木由希子)
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