Home » News

【ニュース】福島県立医科大甲状腺検査結果の本人開示請求書等を専門委員会で配布 個人情報保護条例に違反

 福島県立医大放射線医学県民健康管理センター内に設けられている甲状腺検査専門委員会で、甲状腺検査結果の画像等の開示を求める自己情報開示請求書などが、個人情報を含んだまま会議資料として委員全員と事務局職員に配布されていたことが、情報公開請求によりわかった。

実際に配布されていた請求書等は こちらから
※黒塗りされているのは、個人情報を理由に情報公開請求に対してい非公開としたため。

(1)どこに問題があるのか

 情報公開請求や個人情報の本人開示請求の際は、氏名や連絡先などの個人情報を記入した「請求書」を提出する。この際提供される個人情報は、請求手続の処理に必要なものであるので、県立医大は請求手続に必要な範囲で利用しなければならない。なぜなら、福島県個人情報保護条例は、収集目的外での利用は原則として禁止しており、目的外での利用は条例で定める場合に限っているからだ(第7条)。

 甲状腺検査専門委員会は、請求手続きそのものには直接関与していない。そのため、会議参加者に個人情報を含む請求書類を配布する根拠がない。さらに言うと、大学事務局で管理されているもののほかに、会議に出席していた委員、事務局職員が会議資料を持ち帰っている。この多くが、組織的な管理ではなく、個人的な文書として会議資料を保管している。私文書化している会議資料に、請求者の個人情報が含まれているという状態が続いていることになる。個人情報の安全管理の考え方からすると、組織的な管理を離れたところに個人情報が不必要に散在をしている状況は、非常にリスクの高い状態を自ら作り出していることになる。県立医大は、個人情報保護条例では安全管理義務を負いながら、実際の業務はハイリスクな個人情報の管理を当たり前のこととして行ってきたといえる。

 また、当初は本人開示請求書は請求書そのものが配布されていたが、途中から過去にさかのぼって開示請求をした人の一覧表を指名入りで作成、その後すぐに氏名は削除したものの、甲状腺検査の受付番号が記載されて炒め、「他の情報と照合することにより個人が識別できる」という、個人情報の定義に当てはまる形で一覧表が作成され、配布され続けていた。

 このことから、情報公開クリアリングハウスでは、6月11日付で福島県立医大に対して要望書を提出し、以下の事項を求めた。

情報公開請求と自己情報の本人開示請求にかかる個人情報の適正な取り扱いに関する要望書(2013年6月11日)

  1. 甲状腺検査専門委員会だけでなく、放射線医学県民健康管理センターにおいて情報公開請求書、自己情報開示請求書、自己情報開示請求の一覧のコピーが何部作成され、どこに保管され、何部が正当な個人情報の利用範囲であるのか明らかにしてください。また、一覧表などデータで存在しているものも同様にしてください。
  2. 1で把握した請求書の管理状況をもとに、不要な請求書類や請求者の個人情報に該当するものについては直ちに廃棄・消去をしてください。
  3. 今後、県立医大において情報公開請求、自己情報本人開示請求の事務処理のフローを明らかにし、個人情報の利用範囲、取り扱い方法を明確にし、県民に対してこれらの情報を公開してください。
  4. 甲状腺検査結果の自己情報開示請求に関しては、請求をするという行為を特別なこととして扱うのではなく、簡易に誰でも容易にアクセスできるように仕組みを整えてください。
  5. 個人情報が個人情報保護条例に違反して取り扱われていると認める場合は、必要な内部処分等を行い、組織としての総括を行ってください。

 これに対する回答が、6月26日付で県立医大からあった。

 県立医大からの回答

 要点は以下の通りだ。

  1. 請求書は請求内容を確認の上、当該公文書を保有する所属に回付し、原本は事務局総務課が保管している。
  2. 請求書は内部において事務処理を進める上で最低限必要な部数のコピーを作成し、自己情報の開示請求一覧は請求状況把握のために作成
  3. 甲状腺検査専門委員会は、開示請求の決定等の事務処理に直接関連しないものの、請求状況を県民健康管理センター甲状腺部門内で共有し、個人情報利用に相当な理由があったため適正であると考えている。
  4. 今後については、個人が特定されない形になるよう配慮するなど、個人情報の取扱いには細心の注意を払う
  5. 甲状腺検査結果の開示手続の簡素化等については検討をしていく

(2)県立医大の回答の問題点

 県立医大の回答は、個人情報保護条例に照らして何が問題になっているのか、理解しているとは言い難いものである。具体的には、以下のことが問題になる。

  1. 甲状腺検査専門委員会の配布資料として委員の個人管理になっている個人情報を含む請求文書が、私文書のまま管理されたままで対処がされていない(回答を受けて当会が電話で確認済み)
  2. 委員会で資料として請求書類を配布していることを「相当の理由があり適正」としているが、一方で請求手続に委員会が直接関係ないともしており、請求に係る個人情報の収集目的に照らして利用に相当の理由がないことも説明をしている
  3. 自己情報開示請求一覧は、最近は氏名の記載はないが、甲状腺検査の「受付番号」を記載しており、受付番号から個人を識別できる個人情報であることの認識が不十分

 以上の問題を踏まえて、6月27日に以下のような追加で大学事務局に対して要望を行った。

  • 個人情報収集の目的に照らして、把握をしておきたいという理由だけで会議資料として請求者の個人情報を配布することは、明らかに相当の理由ではなく、ついでに知っておきたいという関心を満たす以上のものではなく条例違反であり、回答の前提となる認識が誤っていること。
  • 個人管理となっている請求書類等は、県立医科大として組織的に責任をもって廃棄等の処理を行うべきこと。また、個人の努力や判断にゆだねることは、安全管理上極めて不適切であること。
  • 自己情報開示請求一覧は、個人情報に該当するという認識を持つべきでること。

 これらについて対処をしたいとの口頭での返答を県立医大担当者より得ているが、今後実際に対応されるか否かについては、経過を見る必要がある。何より、医科大学として附属病院を抱え、さらに県民健康管理調査の実施をゆだねられており、センシティブな個人情報を扱う立場ながら、このような個人情報の取扱いが容認されてきたことは極めて問題だ。個人情報を、知っておきたい、関心がある、請求者を把握して起きないといった主観的、抽象的な理由づけで利用したり提供することは、個人情報保護条例の趣旨を理解していないと言わざるを得ない。さらなる改善を期待したい。

 プレスリリース 福島県立医科大甲状腺検査結果の本人開示請求書等を専門委員会で配布
         個人情報保護条例に違反(2013年6月28日)

Print Friendly, PDF & Email