[特集:デジタル関連法案⑰] 国ではLINEが新型コロナ禍での健康調査を実施する主体

 
 2020年3月末に厚生労働省とLINE社の間で締結されたのが「新型コロナウイスる感染症のクラスター対策に資する情報提供に関する協定」です。協定書を情報公開請求で入手していますが、公開されたのは協定書のみでした。

 国の場合、LINEを自ら利用して情報収集等を行うための協定ではなく、LINE社がユーザーに対して健康アンケートを実施、そのデータを厚労省に提供するという枠組みになっており、しかも厚労省が実施したアンケートだと誤認させるような方法・態様で行ってはならないという条件付きです(もっとも、第1回のアンケート調査は厚労省のロゴしか入っていないもので、明らかに多くの人が厚労省実施の調査だと思っていましたが)。

 この場合、LINE社が自ら情報を収集しているので、データの所有者はLINE、厚生労働省は提供を受ける側で、厚労省は協定に係る事業については責任を負わず、LINE社が苦情やクレーム、法的請求があった場合の対応を行い解決するものと協定書でもさだめられています。今般のLINE問題が飛び火してきたとしても、厚労省の責任は基本的にはないということになります。

 ただし、協定は第三者提供が情報処理の委託か、厚労省と事前協議経た場合のみ可能としており、仮に中国から閲覧可能な範囲にこのデータが含まれていた場合で、中国から閲覧できたことが「第三者提供」に該当すると個人情報保護委員会が判断すれば、協定に反した状態であったことになるので、厚労省も何もしないわけにはいかないでしょう。

 なお、厚労省がLINEを使っている新型コロナ対応には、海外からの帰国者向けの健康状態のフォローアップがあります。自治体の保健所等から帰国者に対して電話連絡でのフォローアップが行われてきましたが、LINE社の協力でLINEトーク画面上で健康状態の回答ができるようになっています。これ利用する場合は「LINEアプリ等を活用した健康確認個人情報の取扱いに関する説明書兼同意書」を提出する必要があり、それによると、厚労省公式アカウントと利用者の間のトーク内容(回答内容)がLINE社で保持されるとあります。3月19日に政府は、個人情報や機密情報を含むLINEの一時利用停止を表明しており、こちらは3月20日から利用停止になっていますね。

 
(文責:三木由希子)

 

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