森友学園問題の「事実」を明らかにすることを求める声明

 情報公開クリアリングハウスは、2017年5月に森友学園への国有地売却交渉記録の情報公開訴訟を提起し係争中です。

 近畿財務局、財務省本省、大阪航空局に対して行った情報公開請求ではいずれも不存在決定となたっため、当初は不存在決定を争う訴訟でしたが、途中で決裁文書改ざん(請求対象に含まれる文書)、交渉記録の存在が明らかになり、いずれも不存在決定処分が取り消され、一部開示決定に変更となっています。ようやくすべての決定変更が終了したのが2019年12月のことで、2020年2月28日に訴え変更を申し立て、これから本格的に不開示と国賠請求を争うことになっていました。

 そうした中で、3月26日号の週刊文春で、決裁文書の改ざんに関与させられた財務省職員(故人)の手記が公表され、遺族が国と当時の理財局長の佐川氏相手に訴訟を提起するなどの新たな動きがありました。当法人として、こうした動きを受けて声明を発表しました。

 なお、これまですでに13回の口頭弁論が開かれていますが、争いは実質的な内容に入れず今に至っており、訴訟本体としてはほとんど進んでいません。訴訟のこれまでの経過は、こちらで確認いただけます。

 声明のPDFファイルはこちらから→ https://bit.ly/2Ux0lMY

 


2020年3月26日

森友学園問題の「事実」を明らかにすることを求める声明

特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス

 当法人は、公的機関における市民の知る権利の確立を目的に活動する特定非営利活動法人です。この活動の一環で、2017年5月17日に森友学園交渉記録情報公開訴訟を提起し、東京地裁で係争中です。

 週刊文春3月26号で、森友学園国有地売却に係る決裁文書の改ざんに関与させられた元財務省職員の故赤木俊夫氏の手記が掲載され、赤木氏が自殺に至るまでのさまざまな状況が、配偶者の証言とともに明らかにされました。森友学園への国有地売却価格問題の事実関係の隠ぺいのため、決裁文書の改ざんと交渉記録の廃棄が行われました。こうした不正に加担した者が守られ、組織的に守られる一方で、社会的良識ある個人に深い葛藤をもたらし、追い詰めたことに強い憤りを覚えます。

 森友学園への国有地売却に係る決裁文書に記載されていた内容は、実務に携わる職員にとって不都合であったのではなく、政治的に不都合なものであったにほかなりません。財務省は、決裁文書改ざんと交渉記録の廃棄に関して内部で調査を行い、2018年7月に報告書を出していますが、問題が起こった背景にある政治的問題を不問にし、改ざんや廃棄が実際に行われた場面にのみ焦点化したものであり、政治的責任につながるものは明確に除外されたものでした。

 本来は、独立した第三者にしっかりとした権限を与えて、森友学園への国有地売却に至る経過に関する検証・調査も含めて、決裁文書改ざん等についての調査を行うべきでした。しかし、それを避け、財務省内での調査にとどめたのは、森友学園への国有地売却価格には問題がなく、首相の妻をはじめ政治的関与はないという政治的な意思が示された意を受けた結果というほかありません。

 今、決裁文書の改ざんに関与させられた故赤木氏の手記によって、財務省内の調査という枠組みでは決して言及されてこなかったことの一端が明らかになりました。今回、内部調査の不十分さが改めて明白になったことから、一連の森友学園問題についての事実を明らかにするためには、独立した第三者による調査が必須であり、可及的速やかに調査を行うことを求めます。

 なお、冒頭に述べた通り、当法人は森友学園交渉記録情報公開訴訟を2017年5月に提起しています。同年2月24日の佐川理財局長による交渉記録廃棄済みの答弁の直後、同27日付で近畿財務局と大阪航空局、3月2日付で森友学園への国有地売却に関する協議・検討などに係る文書を情報公開請求しました。不存在となったため提訴に至り、並行して証拠保全申立ても行いましたがこちらは棄却となりました。その後、交渉記録等については財務省、大阪航空局共に存在を認め、不存在決定が取り消され、一部開示決定が改めて行われ、2020年2月に訴え変更の申し立てを行っています。

 この訴訟は、これから、財務省や大阪航空局(国土交通省)がこれまで一切明らかにしていない、財務省本省と近畿財務局の間の協議・検討の記録、近畿財務局と大阪航空局の間の協議・検討の記録、大阪航空局と国土交通省の間の協議・検討の記録の不開示について本格的な争いが始まります。また、当法人の情報公開請求対象には改ざんされた一連の決裁文書も含まれ、決裁文書及び交渉記録の悪質な隠ぺい及び情報公開請求後の交渉記録廃棄について、国賠請求を従前の請求から拡張して本格的に争うことにもなっています。

 当法人としては、情報公開法という主権者に与えられた手段を活用し、引き続き情報公開訴訟を通じて国有地売却問題で明らかにされていない経過を明らかにし、国賠請求を通じて悪質な情報隠ぺいが構造的になぜ起こったのかを明らかにする努力を行う所存です。このような取り組みが、今般、国および佐川氏に対して提訴に踏み切った故赤木氏ご遺族の後押しに少しでもなることを願っています。

以上

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