【レポート】国家戦略特区の決定プロセスの情報公表状況をまとめました

 この間、加計学園問題に対して、国家戦略特区の推進者や問題当事者と思われる人々から、プロセスに「一点の曇りもない」という言葉がたびたび聞かれます。

 例えば、加計学園問題について、国家戦略特区諮問会議の民間議員が2017年6月13日の記者ブリーフィングで「制改革のプロセスに一点の曇りもないということです。」(八田達夫アジア成長研究所所長、大阪大学名誉教授)と説明し、同24日には安倍総理が「(学園理事長が)私の友人だから認めてくれ、という訳の分からない意向がまかり通る余地など全くない。プロセスに一点の曇りもない」 と述べたことが報じられました。さらに同26日には、山本幸三地方創生担当大臣が「粛々と議論を進めてきた。一点の曇りもないやり方だ。決してひるまない覚悟でやりたい」 と述べた報じられています。

 実際に、何をもって「一点の曇りもない」といえるのか。実はその根拠はなく、web上で必要な情報は公表されているとか、自分たちがそう言っているのだからそうなのだ、という以上のことがわからないところでした。そこで、どこまで情報が公表されているのか、どこで何を決めているのか、改めて公表情報をもとに状況を整理してみました。

 そのフルレポートはこちらからご覧いただけます。

諮問会議と区域会議

 国家戦略特区の決定プロセスのうち、国家戦略特区諮問会議、区域会議が意思決定の最終的なプロセスに組み込まれていますが、ここは会議時間も短く実際な協議や調整、評価、判断をするというよりも、ある程度それらの過程を経て選別されたものについて一定の決定や方針の確認をする場、という位置づけになります。

  <平均会議時間>
  諮問会議 平均26.4分(出席者平均12人)
  区域会議 平均46.3分(出席者平均14.8人)

重要なのは国家戦略特区ワーキンググループ

 では、どこが様々な事前裁きをしているのかといえば、国家戦略特区ワーキンググループと事務局になります。ただ、WGとしての会議は2013年度中に開催されたのを最後に一度も開催されていません。WGという会議体というよりも、WG委員という立場で実質的な特区の評価・選別、推進を担っているということになっていました。

 WGは特区の提案、関係省庁等の折衝などを行うとされています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/

 WG委員は2013年度は5名でしたが、WGの会議が開催されなくなって以降に4人増員されています。このWGの委員は非常に重要な役割を担っていて、提案者や関係省庁からの「ヒアリング」を行っているほか、区域内での推進体制の「事務局長」もになっています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/160930goudoukuikikaigi/shiryou5.pdf

WG委員によるヒアリング

 表に見える範囲で言えばヒアリングを行っています。WG委員が行っているヒアリングには以下のものがあります。

 関係各省等からのヒアリング
 提案に関するヒアリング
 有識者等からの「集中ヒアリング」
 関係各省からの「集中ヒアリング」
 自治体からのヒアリング
 指定特区からのヒアリング

 このうち、上二つが継続して実施されているもので、かなりの回数実施されています。2013~2016年度の実施実績は以下の通りとなります。

 関係各省等からのヒアリング 550回
 提案に関するヒアリング 262回

 これらの会議の議事要旨公表状況を見ると、次のようになっていました。

〇関係省庁等からのヒアリングの議事要旨

〇提案に関するヒアリングの議事要旨

 関係省庁等からのヒアリングの議事要旨は公表率が通しで12.7%、提案は35.9%であり、議事要旨の公表は進んでいないということになります。

 特に2015・2016年度は公表されておらず、2015年度は161回中4回分、2016年度は128回中5回分のみ公表されています。また、この2年度の公表案件は、以下の3つの特定の案件に偏って公表されていました。

 海運カボタージュ規制に関する規制改革について
 獣医学部の新設
 小規模保育を5歳までにして、待機児童解消のエンジンに!

 特に、獣医学部新設に関しては、提案、関係省庁等ヒアリングのすべてで議事概要を公表していますが、他の案件に比べて突出して公表されています。

 内閣府に確認したところ、議事要旨が公表されていない理由二つあるといい、一つはヒアリングの事前か事後に確認して公表に同意されなかった場合に非公表、もう一つは関係省庁事業者等の確認が終わっておらず公表に至っていないものとがあるということです。そうすると、獣医学部新設に関しては、関係省庁や事業者等の確認を特に急がせたということになるのでしょうか。

 なお、各議事要旨のファイルの更新日(機械的に記録されている情報)を確認したところ、「小規模保育を5歳までにして、待機児童解消のエンジンに!」はすべて2017年6月12日に更新されており、「獣医学部新設」は2014年12月26日分と2015年2月3日以降の議事要旨は、2017年3月4日以降に更新されていました。最近になって議事要旨の公表となったことがわかります。

ヒアリング以外の記録なし

 この関係省庁等ヒアリング、提案ヒアリングを受けて、どのような評価選別などを行っているのかについての検討や協議の記録は、公表されている情報から確認できません。WGとしての会議を開催しておらずWG委員が動いているため、WG委員の活動と、事務局がヒアリングを受けて何をしているのかがどのように記録が残っているのかがわからないと、実際に何をどのように判断しているのかが不明ということになります。

 加計学園問題では、ヒアリングではなくこちらのプロセスでいろいろな無理があったことが指摘されているところであります。諮問会議や区域会議は、ここでの手続を経ると特区の認定がされるということになりますので、獣医学部の新設に関してもこの手続は形式的に経ていることになります。しかし、むしろそこに至る過程の段階の関係省庁間の協議や事業者との協議などのプロセスに問題があるのではないかと指摘されているところなので、ここの記録が内閣府に何もなければ、やはり、内閣府や官邸の説明は根拠がないということになります。

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