明日には加計学園文書問題について、文科省が再調査結果を公表する予定という。どんな調査結果になるのか大変関心があるが、国会では内部告発した職員の扱いについて質疑が行われたよう。
加計問題の内部告発者、処分の可能性 義家副大臣が示唆(朝日新聞)
加計学園文書問題で、義家文科副大臣が文書の存在などを内部告発した職員について、国家公務員法違反で処分する可能性を示唆との報道内容を見て、そもそものこの件を公益通報者保護制度に乗せて国会で質疑するのは、戦略的には間違いだと思う。
公益通報者保護法は、法の本文と別表で掲げられている法律が定める刑事罰を伴う違法行為について、保護すべき公益通報事実としている。以前にも国会で公益通報者保護法と加計学園の関係で質疑があったが、その際は、退職者が保護の対象にならないことが中心だったので、それは妥当な質問と受け止めたけど、内部の職員が公益通報者に当たるかどうかという質問は筋が悪すぎる。加計学園問題は不公正さが極めて問題だが、公益通報者保護法が対象としている公益通報事実の該当性は、これだとなかなか言いにくいからだ。
だから、公益通報者保護法を知っていれば、このような質問にどんな答弁が来るかは容易に想像がつく。義家副大臣は、「文科省の現職職員が公益通報制度の対象になるには、告発の内容が具体的にどのような法令違反に該当するのか明らかにすることが必要だ」、一般論として、「告発内容が法令違反に該当しない場合、非公知の行政運営上のプロセスを上司の許可無く外部に流出されることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」と答弁としたとのこと。法制度として説明するとこういうことになるのは質問しなくてもわかる。
公益通報者保護法がどうかより、こうした情報が社会に出てくることが「公益」であるとして報道機関や国会議員が守る姿勢を貫くこと。情報を出した職員の特定を促すような追及をしないこと。通報者に暗にプレッシャーを与える答弁を引き出さないことくらいのことは考えてほしい。
もちろん、義家副大臣の答弁が良いというつもりは毛頭なく、公益通報者保護法に該当しない通報であることをもって守秘義務違反に直ちになるなどありえない。非公知か否かは形式的に秘密であるか否かの判断にしかならず、それだけでは守秘義務違反に問えないだろうからだ。
どうせ質疑をするなら、公益通報者として保護するか否かではなく、公益性の議論をすべきだろう。公益通報者保護法にいう「公益」とは、「刑事罰を伴う違法行為」と狭いわけで、もともと、公益はそんな狭い範囲のものではないのだから。(三木由希子)