【コラム】甲状腺検査結果の情報は各市町村も必要としているが…

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 福島県立医科大放射線医学県民健康管理センターに設けられている甲状腺検査専門委員会の資料や議事概要を見ていくと、甲状腺検査結果の市町村別の情報は、市町村からも要望が出されていたことがわかる。

 2012年12月11日開催の第62回の資料を見ると、「県民健康管理調査結果の市町村への情報提供について(平成24年12月4日 健康管理調査室)」という、福島県が作成した資料が配布されている。それによると、県として市町村から照会があった場合は、以下のものを通知するとなっている。

 基本調査…対象者数、回答数、推計済数、結果通知済数等
 甲状腺検査…受診者数、判定区分別数、結節有人数、嚢胞有人数

 また、市町村の求めに応じて個別データを含む提供をするための検討を県立医大でしてもらっているとも記載があり、また上記以外の情報提供については医科大に照会することとしている。

 これについて専門委員会での会議の記録を見ると、

 「市町村からは議会での答弁等のため情報提供を求めている。求めてきた市町村に個別に応じるのではなく、県から一括で情報提供すべきと話している」
 「ある時点ごとに県から統一して出さないと現場も含めて混乱するのではないか。」

 というやり取りが記録されている。個別の照会ごとの対応には否定的であることはわかる。ただ、情報提供を市町村に対して、ひいては県民に対してどうするのかは記録からは見えてこない。その後の議題の中でも確認できない。伝聞で聞いている話では、2011年度の市町村ごとにまとめた情報は当該市町村に提供されているということのようだ。

 その後、福島県は個別情報の提供を求める自治体からの依頼や申請を受けて、県立医大に検討を求めたことが専門委員会第70回の資料からわかる。資料の中に、西郷村と本宮市から県民健康管理調査についての情報提供を求める福島県知事に対する依頼・申請がある。

 西郷村(2013年2月4日付)
  甲状腺検査結果の個人別の結果(村内で実施分)
  【理由】
   ①村民の健康管理や相談において、放射線に対する不安の軽減を図るため
   ②学校・議会からも結果を把握し健康管理体制を求められている

 本宮市(2013年1月18日)
  個人ごとの基本調査、甲状腺検査(画像データを含む)、妊産婦に関する調査
  【理由】
   市の健康管理データバンクへ取り込むため

 これについて、専門委員会の記録には、市町村への情報提供について以下のことが残されている。

 「甲状腺検査にかかる画像データを提供するに当たっては、市町村の使用目的を確認する必要がある。また、セキュリティや医学的な問題もあるので、もう少し議論する余地がある」

 この記録だけでは、甲状腺検査にかかる画像データの提供だけでなく、「セキュリティや医学的な問題もある」としているので個別情報の提供自体が問題になっていると見える。

 確かに、甲状腺検査の画像データに限らず、健康管理調査の個別情報を市町村が保有する場合、どのように利用をするのかという利用範囲の明確化、それが住民の不利益や人権侵害につながらないことの明確化は必要であり、保存期間な管理方法の明確化も必要だ。西郷村や本宮市からの書面にそうしたことが一切書かれていないのは、適当ではない。個人情報保護条例の規定からすれば、県立医大として外部提供をするに当たっては、最低限これらのことを確認したうえで、その適否を決めるべきものであるからだ。

 しかし、このことは一方で県民健康管理調査の結果をどのように県民という当事者のために利用して行くのか、という大きな絵が描かれずに来てしまったことの証左でもある。市町村が住民にとって最も身近な行政組織であるので、そこでさまざまな健康管理上の支援を受けられるのが最も望ましい。しかし、現実にはそこにどういう体制があり、どこまで支援ができるのか、個別データを市町村が取得する以上は、これに対する明確な方針がなければ情報は住民のために活きてこない。加えて、個人には本人開示請求を経なければ提供されない甲状腺検査の画像データが、本人を越えて市町村に先に提供されることに対して、疑問を持つ人も出てくるだろう。

 要求や要望があって情報提供をどうするのかということではなく、どういう情報をどのレベルで共有をしていくのかということの方針を立てないと、今後も情報提供をするのか否かというところで何度も県民健康管理調査の意味や意義、妥当性が繰り返し問われることになる。これは県立医大の課題だけでなく、健康管理調査を県立医大に委託をしている、本当の実施主体である福島県の課題でもある。

 改めて、①個人に対してどういう情報を提供するのか、②市町村とどのような情報を共有してどのように健康管理を行うのか、③県民健康管理調査で追求すべき県民の利益とは何か、についての政策方針を県民参加のもとで決めるべき時ではないかと思う。(三木由希子)

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