行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(番号法案)に関する意見・要望

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リリース
2013年4月1日

 2013年3月22日に審議入りをした「番号法案」に関し、国会での十分な議論を求める「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(番号法案)に関する意見・要望」を発表しました。

番号法案は、法案だけを見てもその実態が良くわからないものです。番号法制導入後は、個人番号を含む個人情報の利用については、本人が「マイポータル」により確認ができ自己情報の使われ方の監視が可能であるなどの説明がされていますが、それについてもすべてのアクセスログではなく、本人が社会保障や行政サービスを受ける上で自己認識できる範囲での個人情報の利用状況のログがわかるという仕組みです。どのような前提であるのかは、より丁寧に説明されるべきであり、国会はこうした論点・争点を明らかにする場として十分に審議をすべきであると考え、以下、ポイントを絞って意見等を述べました。

【意見の概要】
  1. 政府は自らの信頼を得るための最大限の努力とそれを裏付ける市民の権利強化をまずは行うべきである
  2. 行政事務における情報技術を利用することの論点・争点を明らかにすべきである
  3. 個人番号、情報提供ネットワークシステム等は利用範囲拡大を考慮して施策を行うべきではない
  4. 個人番号が見える形で記載される通知カードと個人番号カードの日常的な利用のあり方を具体的に明らかにすべきである
  5. アクセスログが本人に開示される範囲は個人番号の利用範囲のすべてではないことを明らかにしたうえで、個人番号の利用の実態がどの範囲で監視されるのかを明らかにすべきである
 ○行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(番号法案)に関する意見・要望

 



2013年4月1日

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(番号法案)に関する意見・要望

特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
理事長 三木 由希子

 
 当法人は、市民の知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です。
 去る3月1日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(番号法案)」が国会に提出され、3月22日に衆議院にて審議入りをしました。
 番号制度をめぐっては、個人情報の大量漏えいの危険性、番号を使った名寄せ等によるプライバシー侵害のおそれなどが指摘されているところです。
当法人は、公的機関の情報公開の拡充と個人情報の保護が、民主的な政府には不可欠であり、個人と政府の健全な関係の基盤になると考え、この観点から番号法案に関連して下記の通り意見を申し述べます。

【意見】
1 政府は自らの信頼を得るための最大限の努力とそれを裏付ける市民の権利強化をまずは行うべきである

 番号法案が審議入りし、報道等によれば自民・公明・民主党が大筋で法案について合意をしているとされている。番号法案は、市民の権利擁護以上の行政等サービス提供者、管理者側の権限強化が見込まれるものだ。また、再提出された番号法案は将来的な番号利用の拡充を前提とした施策を義務付ける内容になっている。
 この法案のような、プライバシー侵害の危険をはらむ市民的自由との抵触の可能性がつきまとう政策の検討の大前提は、番号を利用した個人情報の利用を進める政府・自治体・関係機関が市民の信頼を獲得するための最大限の努力と、市民の政府等に対する参加・監視機能を強化する法制上の整備が必要である。その重要な手段の一つが、政府が保有する情報の開示請求権を定めた情報公開法だ。
 しかしながら、2011年4月に国会に提出された改正情報公開法案は、審議されることもなく廃案となり、以後、法案は再提出されていない。廃案となった改正法案は、さらに議論を尽くすべき点は多々あったものの、少なくとも、請求者としての市民の権利の強化(より請求権を行使しやすいものとする)、非公開規定の改正による非公開範囲の限定、訴訟手続の強化など、政府に対する市民の主体的な参加・監視を促進するものであった。番号法案の検討・審議の前に政府に対する市民的な参加・監視の権利強化についた立法上、政策上の対応がまずは行われるべきである。

2 行政事務に情報技術を利用することの論点・争点を明らかにすべきである

 正確な所得の捕捉と税と社会保障の一体改革のために必要なものとして番号制は検討されてきたが、番号法案の名称が示す通り、法案で定められた情報技術を用いた行政事務を、「共通番号」を用いることで効率化するということがこの法案の中心的な内容である。行政事務として番号が利用される範囲は、社会保障、福祉、税、防災を中心に、訴訟手続、犯罪捜査などでの利用も含み、特定個人情報(番号を含む個人情報)の提供が行えるとされている(法案第9条、第19条)。
 行政事務での情報技術の利用はすでに広く行われているところであるが、行政事務としてどのような情報技術の利用がプライバシー保護など人権擁護との観点を交えて望ましいのか、という議論に乏しいまま今日に至っている。番号法案は、一定の行政事務を行う上で共通の番号が政策的に必要であるという判断の下に国会に提出されているものだが、技術的に共通化した番号が不可欠かという点については、必ずしも明らかではない。
 番号法案の検討・審議に当たっては、この点についての論点・争点を明らかにし、情報技術の望ましい利用についての理解を深めた上で、番号を導入する範囲は導入の是非、横断的な共通番号によらない必要に応じた情報連携の可能性などについての議論を行うべきである。

3 個人番号、情報提供ネットワークシステム等は利用範囲拡大を考慮して施策を行うべきではない

 番号法案第3条第2~4項は、個人番号、個人番号カード、情報提供ネットワークシステムについて、将来的に他の行政分野や行政分野外での利用の可能性を考慮して施策推進することを義務付けている。また、附則第6条において、施行後3年を目途に利用の拡充について検討を加えることとしている。
 しかしながら、番号法案の検討経過では、番号を一定の分野で、かつ行政分野での利用に限定し、番号を行政横断的、官民横断的な共通番号ではないものとして議論され、市民に対する説明も行われてきたところであり、こうしたこれまでの経緯からは大きく逸脱している。
 個人番号の利用範囲を官民またいで拡充すること、情報提供ネットワークシステムを官民共用とすることは、個人番号という共通番号を通じて広範囲の個人情報を容易に統合・連結し得る環境を作り出す。個人番号を横断的な共通番号として扱うことは、番号法案が提示している個人番号のあり方とは異なる思想を持った番号制度となるものである。
 また、個人番号は政策的な必要性を背景として番号法案が提出されるに至っているものであり、その使途を官民またいで広げることもまた政策的な選択事項ではあるが、番号の共通化、共通利用の不可性とプライバシー侵害への影響は、政策的な選択の前段階の客観的、合理的な判断材料として検討されなければならない問題である。ひとたび個人番号を導入し、その状態に人々がなれればその用途を拡大するということであってはならない。
 以上のことから、番号法案とは別に、番号制度のあり方については国民的議論が行われ、本法案とは別に検討されるべきである。

4 個人番号が見える形で記載される通知カードと個人番号カードの日常的な利用のあり方を具体的に明らかにすべきである

 通知カード及び個人番号カードは、いずれも個人番号を表示したカードとなると理解される。個人番号は、提供が認められている行政手続を除き、何人も他人に対して番号の提供を求めてはならないと、個人番号の提供を求める行為を禁止しているが、通知カード及び個人番号カードが身分証明として利用される場合は、個人番号の提供は求めていないが、個人番号を身分証として求めた側が知り得ることになる。
 また、行政手続を行うに際して、通知カードないし個人番号カードの提示が義務的なものとして取り扱われるのか、任意のものとなるのかなど、個人番号の行政手続における利用と、通知カード・個人番号カードの関係についても、具体的な内容が法案からはうかがうことができない。
 通知カード及び個人番号カードが行政手続で、あるいは身分証としてどのように利用することを想定し、法案の中で扱われているのかを明らかにした上で、現実的にどのようなことが市民の日常生活の中で要求されるのかを明らかにすべきである。

5 アクセスログが本人に開示される範囲は個人番号の利用範囲のすべてではないことを明らかにしたうえで、個人番号の利用の実態がどの範囲で監視されるのかを明らかにすべきである

 個人番号制度の導入後、「マイ・ポータル」によって個人が自分の個人番号を含む個人情報のアクセスログを閲覧できるようになることが、個人番号の利用を監視し、プライバシー侵害を防止することになるとの説明が過去行われてきた。しかし、番号法案から明らかなとおり、個人番号の利用については、情報提供ネットワークシステムを利用して情報連携が行われた場合で、かつ、別表2に掲げられた行政手続についてのみ、アクセスログが記録され、本人がその記録を閲覧できるに過ぎない(第22条)。
 第19条で定められている個人番号を含む個人情報の提供が可能な範囲は、別表2(19条7号)のほか、1~6号、9~14号と定められているが、これらによる提供についてはその利用状況の記録を義務付ける規定はない。番号法案は、訴訟手続、捜査等への特定個人情報の利用を認めており(19条12号)、また、同上13号では「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき」と定め、同14号では、「その他これらに準ずるものとして特定個人情報保護委員会規則で定めるとき」ともある。別表2に定める行政手続は、個人番号の本人に直接かかる行政サービス等の分野であり、本人が容易に個人番号の利用を想定できるものであるのに対し、その他は個別性があるなど本人が予見しにくいものが含まれている。
 個人番号の利用については、アクセスログが閲覧できる範囲は個人番号の利用のすべてではないことを踏まえ、個人番号の利用実態については第19条に定める特定個人情報の提供のどの範囲がどのような形で監視されるのかについて、具体的な説明がなされるべきである。

 以上の点について、国会において慎重審議と審議を通じた論点・争点の明確化がされるよう要望する。

以上

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