政府の新型コロナ対応が行政文書管理ガイドラインに定める歴史的緊急事態に指定されました。この仕組みができてから初めての適用例です。それによって、ガイドラインそのものや公文書管理法の課題が具体的に可視化されてきました。
具体的には、政治主導の判断で進められる新型コロナ対応では、たびたび記録の作成状況が問題になっており、また、ガイドラインが改正を重ねてきた結果、運用に混乱も見られるなどです。こうした状況に対して、ガイドライン改正や運用皆の死について意見書を作成し、4月15日付で内閣総理大臣あてに送付しました。以下が求める改善事項です。こうした意見を述べるに至った背景等は意見書本文をご覧ください。
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求める改善事項
- 「歴史的緊急事態」という考え方自体は残し、記録作成の範囲については公文書管理法第4条及びガイドラインの定める文書の作成義務の範囲を超えて、歴史的緊急事態に当たることによって作成が必要なものを示し、記録の作成義務をガイドラインにおいて定めること。特に、首相、内閣官房長官やその補佐する立場の者は、その立場から政府全体として対応をするものとし、その事務を行う内閣官房において記録作成することなど、文書作成義務の範囲を明確にすること
- 歴史的緊急事態に該当するか否かに限らず、非常時の対応に係る会議等については会議等の記録の作成に一定の時間を要する場合があると考えられるため、歴史的緊急事態における事後的な記録作成ルールを、記録の作成までに一定の時間を要する場合に、事後的に記録を作成する場合のルールとして一般化すること
- 非常時に開催することがあらかじめわかっている「対策本部」や関連する会議等については、各本部等の設置根拠となる法令等も踏まえて、記録作成に関するマニュアル等は策定しておくこと
- 新型コロナ対応に係る会議等・打ち合わせ等の記録作成では、ガイドライン等が定める文書作成義務の範囲が適切に理解されていないことが露呈しているため、ガイドライン及びマニュアル策定に当たっては、常に作成義務のある文書の範囲、歴史的緊急事態ないし非常時であることによって新たに実施する必要がある事柄を明確に分けて、誤解のないように整理すること
- 毎年度実施することとなっている各行政機関における点検・監査、独立公文書管理監による監察、公文書管理法に基づく首相の権限の行使が適切になされるようにするため、歴史的緊急事態及び非常時に対応する会議等を各行政機関内で把握し、公文書管理法に基づく年次報告に反映すること
- 政治的政策判断のプロセスに係る記録の作成・保存については、歴史的緊急事態や非常時に限定された課題ではないため、別途、検討する機会を設けること
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