10月28日に、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議に関する情報公開訴訟を東京地裁に提起しました。
専門家会議については、議事録を作成していなかったことが問題になってきました。専門家会議はすでになく、新型コロナウイルス感染症対策分科会となっていますが、専門家会議の最後の方で、今後の方針として発言者名の記載のない議事概要を改め、発言者名を入れて作成て公表すること、別途作成・保存されていた速記録も保存することが確認され、分科会でもこれが引き継がれています。
発言者と発言内容が紐づいた記録が「速記録」として作成・保存されることになりましたが、議事録の未作成が問われる中で政府は、問題のある公文書管理法及び行政文書管理ガイドラインに関する解釈を述べてきました。実は、専門家会議は当初から、「議事の記録」(発言者と発言内容が記載されたもの)の作成がガイドラインにより義務づけられていたものを、長らくそのこと自体を認めず、議事録の作成を要しないと説明し、発言者名のない議事概要のみの作成で問題がないと説明してきました。
最終的に、政府は専門家会議を「議事の記録」の作成を要する会議と認めますが、発言者名のない議事概要でも問題がないと主張し、「議事の記録」は、発言者と発言内容が一対一で記録されていなくともよいとの説明を始めました。誰が何を言ったかは記録しなくても問題ないという認識です。これは、「議事の記録」として最も重要な誰が何を言いたのかを記録する義務はないということを公式に述べていたもので、今後の公文書管理法及びガイドラインの解釈運用にとって極めて悪い影響を与えるものです。
そこで、情報公開クリアリングハウスでは専門家会議についてガイドラインの定める「議事の記録」の情報公開を求める請求を行っていました。これに対し、発言者名のない議事概要を配布資料を特定し、「全部開示」の決定を行いました。当法人としては、誰が何を言いたのかが記録されたものが「議事の記録」であるとガイドラインに書かれている以上は、それを含まない行政文書は「議事の記録」ではない。つまり、請求した対象文書が特定されて処分が行われていないということになりますので、全部開示決定そのものが違法であると考えており、開示決定処分の取り消しを求めて今回の提訴に至りました。
誰が何を言ったかがわからない行政文書を「議事の記録」と特定した決定を放置することは、この政府の判断を容認することと同義であるため、ややイレギュラーな情報公開訴訟ですが訴訟をすることで、議事概要が「議事の記録」に当たるかどうかを争っていくことになります。
<提訴についての報道>
〇専門家会議の議事録不開示は「違法」 NPOが国を提訴(朝日新聞 2020/5/29)
〇開示文書に発言者の記載なし NPOが提訴 コロナ専門家会議議事録(毎日新聞 2020/5/28)
〇コロナ専門家会議の議事録 情報公開NPOが提訴(NHK 2020/5/28)
〇専門家会議議事録めぐり提訴 概要開示は「違法」 東京地裁(時事通信 2020/5/28)
〇専門家会議の情報開示内容は違法 新型コロナ対策、国を提訴(共同通信 2020/5/28)