[ブログ]会計検査院は森友学園への国有地売却問題だけでなく、すべての入札によらない国有地売却・貸与について検査を行うべき

 会計検査院が11月22日に森友学園への国有地売却についての検査結果報告を公表しました。この検査は、国会からの検査要請事項として行われ、通常の会計検査とは別に行われているものです。

 各紙で報道されていますが、国有地売却について結局は、記録がなくで十分なことはわからなかった、という結果に尽きるところがあります。財務省・国交省からのヒアリングと、保存されている関連文書を読み解いたという点では、表に見えるプロセスが整理された部分はありますが、肝心なところは「確認できない」となってしまうところは、会計検査の限界を見た気がします。

 むしろ、どの程度財務省と国交省が本当の意味で協力をしたのかが、報告書を読む限り不明でそこの方が気になります。国会での審議でも、予算委員会として報告を求めると、それまで一貫して答弁をしていなかった点について、職員からのヒアリングなどによるのか何らか答弁を用意してきた財務省。それも、すでに森友学園側から録音が提供された内容についてだけは、後付けでも認めるという程度の話で、国会に対してこういう対応をしていた特に財務省が、どこまで協力していたのかと疑問に思うのは当然の帰結でもあります。

 検査報告では行政文書の管理については、会計検査院は財務省に関連して

そして、歴史公文書等に該当する行政文書の保存期間は、文書管理者が標準文書保存期間基準において定めることとされており、また、歴史公文書等に該当しない行政文書の保存期間は原則として1年未満とされている。(P86)

としているところなど、ちょっとその解釈違うんじゃないのと思いつつ、結局は行政文書が見つからなかった、確認できなかった、不適当ということを述べています。それは前からいろいろな人が言っていることですが、会計検査院報告が出る前にすでに行政文書管理ガイドライン改正案を作った政府としては、これは過去の問題でこれから改善します、で済ませてしまうところがずるいところです。

 文書がないことを証明することを悪魔の証明という与党政治家もいますが、あることを証明することもまた悪魔の証明。ないことが証明できないとする政府と、あることを証明できていないとされる報道機関や国会議員、市民社会では、どちらが得をしているかは明々白々です。文書がないことにしている政府がどんどん信頼を落としているだけであるので、関係職員からきっちりと聞き取りをして、手元のメモなども参照させて、経過をまずは作ればよいと思うのですが、それもしない。森友学園側がまだ何を持っているかわからない今の段階では、怖くてできないということもあり得るかなとも思います。

 そして、今回の検査結果はあくまでも森友学園への国有地売却問題だけの検査です。しかし、財務省はすべての国有地案件について交渉記録は1年未満で廃棄していると主張をしています。そうすると、すべての入札によらない国有地売却案件で、同じような不適切な問題が起こっていてもおかしくないわけです。しかも、記録を捨てたとすることで検証をしにくくしていることで、責任逃れを容易にする構造が財務省の中に埋め込まれているわけですから、これはいわゆる「不正の温床」という構造ではないのか、と見えます。

 今回は国会からの要請事項として森友学園への売却を検査していますが、会計検査院は入札によらない国有地の売却等について全面的に過去にさかのぼって検査をすべきではないのか、という疑問があります。国有地を記録を残さず処分をしている財務省は、自ら、自分たちの行っている国有地処分には検証性が全くありませんよ、とこの間、裏を返せばずっと主張をしてきているわけですから。森友学園との交渉記録の廃棄を公文書管理法制上問題ないと主張し続けていることは、そういうことです。実際に廃棄したと私はまったく信じていませんが、それでも財務省は主張し続けているわけですから、どの程度検証不可能で疑問のあるケースがあるのか、会計検査院が全面的に検査をしなければ、まったくこの先も財務省の国有地処分は信頼に足りるものにはならないことになります。

 森友学園関係の検査報告で終わらず、会計検査院は次に進むべき、と思います。(三木由希子)

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