2015年11月26日、東京地裁で2008年に開催されていた関係省庁により構成された「秘密保全法制に関する検討チーム」とその作業チームの議事録・資料の一部不開示決定を争っていた情報公開訴訟の判決が出されました。
原告は当会理事長個人です。判決は、原告の訴えを棄却するものです。
検討チームは、秘密保護法制につながる初期段階の検討を行ったもので、関係省庁が参集していました。この検討チーム報告書ののち、「情報保全の在り方に関する有識者会議」が2009年に設けられて検討が進められていましたが、民主党に政権交代して有識者会議は中断。その後、民主党政権の下で2010年に別に有識者懇談会が設置されて秘密保全法制の検討が行われていました。最終的には2013年12月に特定秘密保護法として成立するわけですが、その初期段階であり、基本的な考え方は検討チーム報告書でまとめられていました。
この検討チームとそのもとに設置された作業グループの会議資料と議事録の情報公開請求を行ったところ、一部不開示決定となりましたがほぼ内容は不開示となりました(一部開示された文書はこちらに掲載)。不服申立てでも決定変更されなかったため、提訴していました。
提訴後、特定秘密保護法が成立したことを受けて、資料については開示範囲を拡大する決定が訴訟中に行われましたが、引き続き不開示となったのが以下のものです。
[不開示部分]
①会議内容の議事録(一部は開示)
②秘密取扱者適格性確認制度の概要等に関する部分
不開示とした理由は、①は非公開を前提に行われた会議なので、会議内容を公にすると自由闊達な意見が言えなくなり、また、非公開前提の会議の内容を公開すると今後関係省庁からの協力が得られなくなるおそれがあり、不開示とするというもの。②は、情報保全対策に関する妨害行為や現行の対策内容に応じた攻撃手法の実行等、情報漏えいの危険性を高める事態を招き、ひいては我が国の安全が害されるおそれがあるので不開示とするというものです。
東京地裁判決は、いずれも国の主張を認め、議事録及び秘密取扱者適格性制度を不開示とする判断を妥当とするものです。
原告としてのコメントは以下の通りです。
[コメント]
- 特定秘密保護法につながる初期段階の政府内での検討を行ったのが「秘密保全法制のあり方に関する検討チーム」であり、その経緯を明らかにすることは、政府の説明責任として当然に要請されるものである。特に、検討チームは関係省庁で構成され、そこでの検討は各省庁の認識等を示す点で、極めて重大な意味を持つ
- しかしながら、会議は非公開で行われたが、非公開で行われた会議での発言内容は、非公開を前提にしたものでありそれは報告書の取りまとめが行われた後も、不開示とされることが妥当と判断され、その理由は公にされると率直な意見交換が妨げられ、今後関係省庁の協力が得られなくなるおそれがあるというものだ。関係省庁及びその職員は、政府の政策形成に対して責任をもって関与し、その結果責任を負うべきものであり、そのプロセスに関する説明責任があると同時に、必要な調整・狭義には協力する義務があるというべき。ところが、被告は一貫して公にされると支障があると主張し、裁判所がそれを認めたことは極めて残念。
- 秘密取扱者適格性確認制度については、不開示部分の一部は以下のような部分である。この部分について被告は「どのような場合にどのような手法によって調査が行われるかという手続きの流れが記載されている」と主張しているが、ここに具体的に保護しなければならない秘密が記載されているとはとても言えないと考えるが、裁判所が被告の主張を容認したことは極めて残念である。