【秘密指定制度日米比較①】秘密指定制度の違い、制度の目的

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 特定秘密保護法案に関連して、アメリカの機密指定制度との比較が行われることも増えてきました。

 断片的な情報をもとに良し悪しを議論をしていても仕方がないし、実際にはずいぶん違うところがあります。

 断片情報で良し悪しを議論をしていると、秘密指定制度について、いったい何の議論をしているのかが分からなくなります。何がどう違うのかを整理した上で、アメリカの制度が良いというのではなく、日本の秘密指定の状況を踏まえて一体何を議論すべきか、日本の現状をどうすべきかを考えるべきだと考えています。そのための参考として、比較的情報が収集できている日米の制度比較をしていきます。

 なお、アメリカ法の専門家ではありませんので、誤解などありましたらご指摘ください。また、文中には筆者の翻訳(あくまでも仮訳)を使っています。それなりのところでの引用は、ご自身で原典を確認の上、各自の責任でお願いします。


<秘密指定制度>

 アメリカの機密指定制度は、大統領令により実施されています。連邦議会をへた法律ではなく、大統領による命令という行政命令で、大統領が変わると変更されることがあります。オバマ大統領による機密指定に関する大統領令は以下に掲載されています。

Executive Order 13526- Classified National Security Information

 これ以外に、個別の法律で秘密指定制度を定めているものがありますが、それ以外に秘密指定制度というものはないようです。

 一方、日本の秘密指定制度は、法律に基づくものとそれ以外のものがあります。

 現在、法律に基づくのが、防衛秘密(自衛隊法に基づくもの)と、特別防衛秘密(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(MDA秘密保護法))の2種類です。特定秘密保護法案にいう特定秘密も、法律に基づく政府の秘密ということになります。

 法令に基づかないものとしては、以下のようなものがあります。

 ・省秘・庁秘(各行政機関が規則や訓令で定めているもの)
 ・特別管理秘密(「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」に基づくもの)
 ・文書の取扱い制限を格付けする「機密性情報」という区分(「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」)


<機密指定制度の目的はどう説明しているのか?>

 なぜ秘密指定制度を作るのか、という制度趣旨はどうなっているのかを比べてみます。米大統領令は、命令の本文に前文がついていて、そこにどのような前提でこの大統領令を出すのか、ということが書かれています。

 一方の日本はどうか。既存の秘密保護法制である自衛隊法やMDA秘密保護法には制度趣旨・目的がないので、特定秘密保護法案の目的規定(第1条)くらいしかどのような前提で秘密指定制度を行うのかということが示されているものがありません。

 そこで、二つを並べてみました。

file01

 その違いは一目瞭然です。特定秘密保護法案は秘密保護のための仕組みとしてしか考えられていないということもあると思いますが、秘密保護一辺倒です。米大統領令は、もともと秘密指定制度が情報の自由な流通という、民主制の基礎となる原則との調整が必要であるということへの理解は明示しています。だから、

「国家安全保障の重要な情報を保護することと、機密指定基準と手順、確実で効果的な機密指定解除の正確で責任ある適用によって開かれた政府に対する責任を示すことは、等しく重要である。」

という一文があって、秘密指定制度も指定だけでなく解除に関する仕組みを明確にし、全体を監察する役割と権限を持つ組織を設けるなどしているということだと思います。

 言い換えれば、特定秘密保護法案はこの発想がないので、秘密指定解除については一文入っているだけだし、全体を監督・監察するような仕組みもなく、運用状況を公表するような仕組みもないという、政府のアカウンタビリティなんて発想がどこにもない制度になってしまっている、ということなのだと思います。

 アメリカに何の問題もないというつもりは毛頭ありませんが、この違いは大きいです。

 そして、この違いから思い起こすことは、秘密主義が秘密が行き過ぎて情報の自由な流通がない国や組織が、対外的にも内部的にも強い社会や組織を作ることにはならないということです。秘密主義が行き過ぎる国の社会が強いかどうかは少し考えればわかることです。行政機関などの組織もそうです。秘密が多い組織は、秘密を保持することに力学が働けば、内部に固く閉じていき、いつかは固くなりすぎて逆にもろくなります。どうしたら私たちの社会が健全に強くなっていくのかという、大きな利益を考えることが大切です。

 ところで、大統領令の前文を読んでいて、別の感想も持ちました。最後に「憲法とアメリカ合衆国の法に従う」と書いてあります。憲法に従う大統領というのは決まり文句だと思いますが、一方の日本は「憲法は変えるもの」という政権のもとにある。もちろん、憲法を改正するまでは今の憲法に従っているわけですが、統治の基本に踏み込む憲法について、今の前提ではこの先考えられないかもしれない、ということが、特定秘密保護法案というもののもとで、人の気持ちを余計にザワザワさせているのかもしれない、なんてことも思います。(続く)

文責 三木由希子

 

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