国連「健康に対する権利」特別報告者 日本への調査に関する調査報告書と勧告を受けて

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 国連「健康に対する権利」特別報告者が2013年5月27日からの国連人権委員会で行う報告・勧告内容について、コメントを発表しました。

「国連「健康に対する権利」特別報告者 日本への調査に関する調査報告と勧告を受けて」(PDF)

<以下、テキスト>

2013年5月29日

国連「健康に対する権利」特別報告者
日本への調査に関する調査報告書と勧告を受けて

特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
理事長 三木 由希子

 2012年11月15日から26日に行われた、国連「健康に対する権利」特別報告者アナンド・クローバー氏による日本への調査に関する報告書と、それを受けての勧告が公表されました。公的機関の情報公開・個人情報保護に取り組んできた立場から、調査報告及び勧告について以下の通りコメントします。

 調査報告及び勧告が一貫して求めているのは、当事者である住民を中心に据えた政策と、人権・権利の擁護です。原発事故とその後の健康への影響に関しては、政府、自治体、東京電力、住民などさまざまな立場の当事者がいます。あらゆる局面で、中心にいなければならない住民という当事者が問題の周辺におかれ、住民の参加なしに政府や自治体、東電の行う決定の範囲に縛られている。そのことに、改めて政府などに目を向けることを求めていると言えます。

 勧告は最後に「原発の稼働、避難地域の指定、放射線量限界、健康調査、補償を含む原子力エネルギー政策と原子力規制の枠組みに関するすべての側面の意思決定プロセスに住民参加、特に脆弱な立場のグループが参加するよう、日本政府に求める」(仮訳から引用。以下引用部分は同じ)と述べていることは、それを象徴しています。意思決定プロセスの参加に不可欠なのが、一定の結論のための情報公開ではなく、建設的な情報の公開であり、本人への情報開示です。

 報告は、「情報へのアクセスは健康への権利に不可欠な要素」であるとしています。健康はひとたび損なわれると回復が困難な場合や、生涯リスクを負って生活をせざるを得なくなる場合もあり、個人や家族にその負担がのしかかります。政府や東電は、補償や賠償、社会保障的な支援という方法でしか、その重みを背負いません。であればこそ、個人に対する健康上のリスクをもたらす政策決定、意思決定は、個人の意思や判断に関わらず影響を受ける住民を当事者として中心にすえ、当事者参加のもとで行われるべきであります。

 勧告は、事故発生初期の対応として、「原子力災害後可及的速やかに関連する情報を公開すること」、「影響を受ける地域に関する情報を集め、広めるためにSPEEDIのような技術を早期にかつ効果的に提供すること」を求めています。また、健康調査に関連して勧告は「個人情報を保護しつつも、検査結果に関する情報への子どもと親へのアクセスを容易なものにすること」を求め、さらに放射線量に関しては「放射線量レベルについて、独立した有効性の高いデータを取り入れ、その中には住民による独自の測定結果も取り入れること」とも勧告しています。

 これらの勧告は、①事故時に個人の健康にかかわる決定をするために必要な情報を効果的に提供することによって住民という当事者を支援することになること、②一定の空間線量の中で生活をしている住民の健康管理に関する情報に対してフルアクセスをより容易な方法で行うことで、当事者の決定を妨げることがないようにすること、③放射線量レベルに関して政府の測定結果だけでなく有効性の高い独立したデータを取り入れることによって、異なる主体による多様な測定結果をもってより合理的な放射線量測定を行うことが、個人の判断・決定を助ける、ということを意味しているのではないかと考えます。

 これらの観点から、次のような対応を今後進めるべきであります。
  • 緊急時には被害の予防的な観点からの情報公開を行うという原則を確認し、それを実行するための手段・方法を明らかにすること
  • そのためには、原子力政策全般の情報公開が予防的な観点に立って市民に対して情報公開を行いながら、政策決定等を行うこと
  • 住民の健康管理は当事者の生活を支えるものであるべきなので、検査結果の住民への通知内容は個人の判断、行動を妨げないよう、判定結果だけでなく検査の結果取得される情報の本人通知を行い、そのために必要な予算上の措置を講ずること
  • 健康管理として住民がどのようなことを望んでいるのかという視点から、当事者参加を情報公開のもとに進めること
  • 放射線量測定は、どの測定値がどのような政策的な意味を持っているのかという情報公開を積極的に行うこと
 また、「中間・最終処分場施設の設置を住民参加の議論により行うこと」、「原子力規制委員会の委員と原子力産業の関係に関する情報を公開すること」、「原子力規制委員会が集めた国内及び国際的な安全基準・ガイドラインに基づく規制と原発運営者側による遵守に関する原子力規制委員会が集めた情報について、独立してモニタリングができるように公開すること」とも勧告されています。いずれも、政府・自治体・東電などの原発運営者という当事者の間での意思決定ではなく、住民の参加と監視の下での原子力規制などを求めているものです。これは、原発事故により、政府や東電をはじめとする原発運営者が信頼を失っている中で、まず行わなければならないことです。

 あわせて、情報公開のルール化だけでなく、政府等は、情報公開をする目的に照らして情報が活用できるような形態でそれを行うこと、情報を活用した住民参加を進め、住民監視の下で指摘された事柄を反映させるための、コミュニケーションの形式にこだわらない多様な回路を作るなどに取り組むべきであります。

以 上


◆連絡先
特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
〒160-0008 東京都新宿区三栄町16-4 芝本マンション403
TEL.03-5269-1846 FAX.03-5269-0944

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