[意見・提案] 行政文書ファイル等の名称抽象化問題を証言した職員を 探索するような通知に抗議する

 防衛省内で、行政文書のファイル等の名称が抽象化されてどのような内容のファイルかわからないようにして、行政文書ファイル管理簿に登録・公表されているとの報道に対し、内部で取材に応じた職員を探すよう通知が出されていたことを受けて、以下の抗議文を防衛省あてに郵送しました。

 PDF版⇒ https://bit.ly/2H6tkOR

 通知の内容等については、以下の記事で確認ができます。

 公文書クライシス ファイル名抽象化 防衛省が証言者探し
 https://mainichi.jp/articles/20180526/k00/00m/040/163000c


2018年5月31日

防衛大臣 小野寺 五典 殿

行政文書ファイル等の名称抽象化問題を証言した職員を
探索するような通知に抗議する

特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
理事長 三木 由希子

 当法人は、公的機関における知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です。

 防衛省において、行政文書ファイル等の名称が抽象化されていたことを指摘する報道を受け、5月18日の閣議後会見で小野寺防衛大臣が「分かりやすい名称にする必要がある」と述べ改善に着手した(5月18日毎日新聞)とされたことは、問題の改善に向けた対応として歓迎しているところです。

 その一方で、25日の衆議院安全保障委員会で、行政文書ファイル等の名称の抽象化問題について、防衛省内で取材をうけた職員について、「どういう意図で話をしたのか把握して正しい広報をする必要がある」との答弁があったとの報道(5月26日毎日新聞)がありました。5月15日付の防衛省総括文書管理者による「行政文書ファイル等の名称に関する調査等について(通知)」では、「部外者からの取材対応については、『報道機関を含めた部外者からの取材対応に関する規則等遵守の徹底について(大臣官房広報課事務連絡。30.5.8)』により、対応した内容を上司及び報道担当部署に報告等することとされているところ、かかる報告等がなされていなかったとすれば、当該事務連絡にも反するもので看過できない」とされ、事実関係の把握が必要としています。この「規則等」は広報対応に関するものを指していると思われます。

 そもそも、行政文書ファイル等の名称の抽象化問題の取材対応は、「広報」ではありません。組織内部で是正ができなかった問題について、本来あるべき姿に是正するために必要な対応がとられたものです。

 名称の抽象化問題は、防衛省内で把握できる状態にあり、公文書管理法制下において実施されている点検・監査でも把握可能なものであって、総括文書管理者及び文書管理者が適切な是正措置をとってこなかった結果であります。それにもかかわらず、総括文書管理者が前掲の「通知」で「広報」として規則等の遵守を求め、おそらく文書管理者であろう上司に報告を求めることは、不適切極まりないと考えます。このような組織内で是正が図られない問題を、公益性のある範囲において外部に伝え、是正・解決を図ることを「広報」と同列にして報告等の徹底を求めることは、かえって防衛省の健全性を損なうものであり抗議し、名称抽象化問題を証言した職員を探索するような通知の撤回を求めます。

 また、行政文書ファイル名等の名称抽象化問題のような問題指摘を、「広報」と同列にして報告等を求めるべきものであるとの通知は撤回し、むしろ防衛省における問題の把握、調査、是正を、問題を指摘した職員の不利益にならないよう適切に対応する体制、対応の整備、強化をすることを求めます。

以上

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