[ブログ]行政文書管理ガイドラインの位置づけとは何か

 意外にいろいろな人から最近質問を受けるのが、行政文書管理ガイドラインは誰が決めるのか、その位置づけは一体何かということ。

 今年起こった公文書管理に関連する一連の問題に対し、ガイドラインを改正して対応するという総理、与党の対応を見て、ガイドラインを政令などと同レベルのものなのではないかと思った人も多いよう。そのためか、閣議決定されるものだと理解をしたようで、たびたび「閣議決定する」という前提で質問いただく。ガイドラインは閣議決定されるものではなく、内閣総理大臣決定だ。総理の決定であるという意味では高いレベルの決定ではあるが、ここでいう内閣総理大臣とは所管庁の大臣という感じの意味合いだ。つまるところは、内閣府が決めるということ。やたらと公文書管理法の関係で行政文書管理ガイドラインが取り上げられるものの、このガイドラインとは一体何なのかは確かに説明されていないから当然とも言える。

 ガイドラインの策定は、法的に義務付けられているものではなく、各行政機関が策定する行政文書管理規則で必要な事項を定めるもので、それに加えて実務上の留意事項が盛り込まれている。法律との関係で言えば、公文書管理法10条1項で行政機関の長に規則の制定を義務付け、10条2項で規則に定める事項を示し、その規則の制定には内閣総理大臣との協議と同意が必要となっている。加えて、法29条2項は、内閣総理大臣が各行政機関の規則に同意をする場合、公文書管理委員会に諮問を行わなければならないとしている。

 そこでガイドラインは、各行政機関と内閣府の協議や同意に際し何の標準もないと機能しないので、この規則として必要な条件を示しているというものになる。そのため、規則について諮問を受ける公文書管理委員会が、その標準となるガイドラインについても意見を述べている、という関係性になっている。ガイドラインの改正だけで終わるのではなく、その後に各行政機関が規則を改正することになり、かつ、改正された留意事項をもとに細則等内部での実施に当たっての諸ルールを改正することなどを含む流れになる。ガイドラインは全行政機関の行政文書の管理ルールと実務に影響を与えることになるので、決して軽いものでもなく、実務への影響が極めて大きいが、言い換えると、法改正などによらずに事実上の法改正や法規定の解釈を変えるようなことを、ガイドラインで行うのは間違っていると思っている。

 この各行政機関の規則の改正は法的義務のあるパブリックコメントの対象となるが、ガイドラインは政令でも規則でも「審査基準」などとも違うので、法定パブコメの対象ではないという扱いでパブコメが実施されている。

 ついでに、パブコメについても意見を出せば案が根本から覆せないはおかしいという意見もあるが、個人的にはそれは違うと思っている。パブコメは最終案を公表して意見を募集する手続として基本的には機能している。そのため、根幹にかかわることを変えるというようなことを想定している手続ではない。それをするなら、パブコメを複数回実施させるような手順にしておかないとならない。むしろ、パブコメ以外に意見を聴くなどのプロセスがない、あるいはさまざまな考えや利害を聞き、調整する開かれたプロセスがないので、パブコメへ意見を出すことがキャンペーンツール化してしまっているところがある。本来は、パブコメ以前の参加のプロセスを作る必要があるし、パブコメに至る前が勝負ということになる。こういう前提だと、パブコメに出てきた案に対しては、大きなところで苦情や意見をいうだけでなく、細かく技術的なことも含めて指摘をする必要があるので、私の書く意見書はやたらと細かくなる。

 ここにまとめた公文書管理法関係のものは、法の規定やガイドラインを見て整理するとわかるもので、何も新しいことはないという、面白くもなんともないブログでした。(三木由希子)

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