マイナンバー法施行にあたっての声明 「透明性の欠如したマイナンバー利用議論は公正性を欠いている  そのことそのものがプライバシーへの脅威だ」

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 本日(2015年10月5日)、マイナンバー法が施行されました。これを受けて声明を発表いたしました。


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 2015年10月5日

 マイナンバー法施行にあたっての声明

 透明性の欠如したマイナンバー利用議論は公正性を欠いている
 そのことそのものがプライバシーへの脅威だ

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               特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
                        理事長 三木 由希子


 当法人は、市民の知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です


 2015年10月5日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(いわゆる「マイナバー法」)が施行されました。順次、個人ごとに付番された「個人番号」の通知が行われ、年明けから一定の手続でマイナンバーの申告等が必
要になります。

 マイナンバーは、当初社会保障・税番号に限定した利用で議論され、また導入について説されてきたところです。その後、災害分野、裁判手続、刑事事件捜査での利用なども法定化され、さらには、利用範囲の拡大がマイナンバー法の基本理念とされるに至
りました。マイナンバーは確かに、直ちに個人情報の一元化を図るものではありませんが、一つの番号の利活用を推進していくことによって、将来的にどのような脅威につながるか、誰にも予測ができませんし、立法動向によってその行方は大きく左右されます。

 現実をみれば、マイナンバーの利用等をめぐるこの間の動向は、制度導入に関する議論の当初からすれば、もはや同じ制度のこととは思えない展開を見せています。

 現在進行している議論は、マイナンバーそのもの、マイナポータル、個人番号カード、情報提供ネットワークシステムと、マイナンバー法により生み出された複数のもの利活用です。マイナンバー法という一つの法律から、どのような社会が生み出され、個人がそこに落とし込まれて行こうとしているのか、もはや見通すことすら難しくなっているのが、昨今のマイナンバー利用議論ではないか。確かに、政府内で行われているさまざまな第三者組織による検討などは、資料や議事録ないし議事概要が公開されるなどしていますが、全体像の透明性を欠き、当事者である市民が何に同意をし、理解をしているのかが、よくわからなくなっているのではないでしょうか。

 このような状況は、個人情報保護の原則からそもそも逸脱しています。公的機関の個人情報保護制度の基本的考え方は、個人情報の収集・保有にあたっては個人情報の利用目的を明確にし、本人がその目的を認識し、その目的を超えた利用・提供を原則として禁止するというものです。個人情報の取得・保有段階での利用目的についての当事者との合意によって、個人情報の取り扱いについて本人が予見できない事態を減らし、合意を前提にした個人情報の利用を行う。本来であれば、個人情報を連携させるための基本情報として使われるマイナンバーとそれに伴う諸制度・システムは、この原則を徹底した政策形成、開かれた議論、合意形成が行われるべきものです。

 もはやこの先何にマイナンバーを使い、それに伴う諸制度・システムよってプライバシーがどのように扱われることになるのか、そもそも何のためにマイナンバーという制度を創設したのかという原則的な部分すら定かではない現状は、個人情報保護の基本的な原則を大きく逸脱しているものといえます。マイナンバーは、現行法の下では利用・提供範囲はある程度限定されてはいますが、現在の議論の動向は、将来的にほとんど無意味なものになる。そのことが現実的な問題であることを露呈しています。そして将来的に、個人番号カードを持たない選択する人に、番号カードの取得促進のためにどのような不利益を政府が負わせようとしているのか。そのことにも大きな懸念があります。

 マイナンバーやその関連する諸制度・システムについて、現状説明していることから今後、何を変えるのか。マイナンバーそのものの利用目的として、今、何が合意されているのか。今後、関連する諸制度やシステムとマイナンバーとの連携が具体的にどのように行われるのか、そのことでどのような影響が生じるのか。断片的、断続的に情報がさまざまな形で伝えられるのではなく、マイナンバーそのものの目的、そして関連する諸制度・システムの目的について、政府や政治が誠実に問いかけ、明らかにし、その妥当性を正面から問うべきです。

 その姿勢と実現がなければ、マイナンバー議論は透明性と公正性に欠いたものに終始し、その政府や政府の姿勢そのものがプライバシーへの脅威です。マイナンバーに関するセキュリティ対策や個人情報保護に関する説明は、無意味なものになります。公正で開かれた議論を、誠実に情報公開することで行うことが、マイナンバーにこそ求められている。それなしにマイナンバーやその関連制度やシステムの利用を進めることは、あってはならないことであります。その観点から見れば、現状はもはや個人情報保護の原則に照らして収集・保有目的が明確とは言えないものであります。利用を最低限のものとして開かれた議論と誠実な情報公開をまずは行うべきです。


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