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東京都 公文書管理条例案を不開示、審議会の録音物は不存在

 4月26日までパブリックコメント中の東京都情報公開条例改正案と公文書管理条例案の概要。、パブコメ前に情報公開・個人情報保護審議会に情報公開条例は改正案を諮問し答申を得ており、公文書管理条例案が議案外で報告、意見を聞いています。

 この審議会は1月と3月に開催され、1月分はすでに議事録が公開されています。3月分が概要が公開されていますが、議事概要は作成されておらず、配布資料がわかる程度です。この審議会の議事録は、長いと半年以上公表されないこともあり、次回の審議会がいつ開催されるか次第で、相当に公表まで時間がかかることがあります。また、聞いているところでは、審議会以外でも有識者の意見を聞くと都庁担当者が説明しているということも聞いていたので、3月分の審議会の録音物と審議会以外での意見聴取状況を情報公開請求していました。

 〇第67回東京都情報公開・個人情報保護審議会議事録(2017/1/12開催)
 〇第68回東京都情報公開・個人情報保護審議会概要(2017/3/24)

 4月19日付で決定が出され、公文書管理条例案は全面不開示、審議会の録音物は不存在、審議会以外での有識者の意見聴取状況は、東京大学の宇賀克也教授にご意見拝聴しに行っていたことがわかりました。

 宇賀教授への意見聴取の議事概要

  • 公文書管理条例案の全面不開示


 「東京都公文書の管理に関する条例(案)」がなぜ不開示となったのか。その理由は、「審議、検討中の情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ及び不当に都民の間に混乱を生じさせるおそれがある」となっています。

 条例案を公開することが、非公開理由で示されるような混乱を招くとは本当でしょうか。不開示理由には「不当」という言葉が用いられており、この言葉は不開示により保護される利益と、公開することによる公益の比較衡量することを求めるものと理解されています。公表されている公文書管理条例案の概要はあいまいで、意見を求めている市民に対して十分な情報を与えていませんので、条例案を公開することはむしろ市民に十分な情報を与えるという大きな公益性があります。

 一方で、非公開とすることで保護したい利益がはっきりしません。パブコメを求めている以上は、さまざまな意見が案に対して述べられることを予定しているものであるので、別に意思決定の中立性や率直な意見交換を不当に損なう要素はないのではないか、とも言えます。

 もう一つ問題なのは、パブリックコメントを行う時点で条例案を公表するのが当たり前、というのが常識的なパブコメの実施方法であるのに、東京都はそれができないとしている点です。

  • 東京都は都道府県で唯一のパブコメ制度空白自治体


 東京都は、パブコメに関する要綱などを持っていない唯一に近い都道府県です。要綱、要領、方針などがないのは茨城県と東京都のみ。茨城県は、以前は「パブリックコメント制度事務フロー図」がwebで公表されており、2010年の総務省によるパブコメ制度の調査では、都道府県でパブコメを制度化していないのは東京都のみでした。

 茨城県は今回改めて探したところ、フロー図の掲載が確認できませんでしたので、要綱等をなしとして取りまとめると、下図のようになります。

 表中の〇が市民の権利義務に関する条例の他に、行政運営や政策の基本的な事項を定める条例についても条例案などを公表してパブリックコメントを実施しているところです。情報公開条例や公文書管理条例がパブコメの対象となる仕組みがあるところと言い換えられます。

 △は、市民の権利義務に関する条例について案を公表してパブコメを実施しているところ、×は基本的な計画などについてはパブコメを実施するものの、条例の制定に際しては実施していないところです。

 条例についてもパブコメを実施しているところは、パブコメ段階で条例案やそれに近いものを公開して意見募集をしています。東京都はそれができないという立場を、公文書管理条例案の不開示で明らかにしたということになります。

 条例案の公開はパブコメによって各道府県で進んだところがあります。制度なき東京都は、10数年前に他がある程度克服した情報非公開の壁をまだ超えられていません。情報公開が一丁目一番地なら、このパブコメ制度なしという状況も何とかしてほしいところです。

  • 審議会の録音物の不存在


 情報公開・個人情報保護審議会の録音物不存在は、録音物を取っていないのではなく、議事録作成を外注していることが原因です。録音物が外注先にあるということのようです。これで、3月の審議会で何が条例に関して話し合われたかは、何か月か先にならないと明らかにならないことになります。

 東京都に限らず、「公文書」の定義には「行政機関が保有するもの」という条件が付いています。これが、行政機関として物理的に支配をしていることとされており、外注先にある記録類はこの物理的支配下にないとされて、外注先にあったとしても請求に対して不存在とされます。

 東京都では、豊洲市場問題で設計に関する外注先が作成していた東京都と業者の間の打ち合わせ記録が、東京都では見つからず不存在となり、のちに発注先にあったことが明らかになり都が取り寄せて公開したことがありました。外注先に文書類を置いておくと、公文書とならずに情報公開条例も公文書管理条例の適用も逃れることになります。

 今回、東京都は条例の改正・制定で「公文書」の定義の変更を予定していませんので、引き続き外注先に記録を残しておき、都として取得しないということは、抜け穴として利用できる環境は残したというところでしょうか。

  • 1月の審議会で議論していたこと


 1月の審議会では、情報公開条例の改正により閲覧手数料を廃止することについてなど、議論の様子を議事録から拾ってみると、次のような意見が出ていたことがわかりました。

○藤原静雄(中央大学法科大学院教授)会長代理:一丁目1番地が情報公開なのですけれども、たしか施策の中には税の有効な活用というか、税の使い方のこともありましたので、そのバランスは、考える必要がいずれ出てくるかもしれませんので、そこのところはきちんと我々もウォッチしますし、事務局としてもウォッチしていただきたいなと思います。

○谷茂岡正子(東京都地域婦人団体連盟会長)委員:私たちは一応、閲覧手数料というんですか、無料になることは大変ありがたいことなんですけれども、ただ1つ、何でもかんでも閲覧を誰でもしていいということのないように、その点はやはりきちっと今までどおりの手続というんでしょうか、あるいは閲覧の利用の内容というんでしょうか、それはきちっと、決められることは決めて、条件も付けながら、きちんとした閲覧をさせてほしいと。ただむやみに閲覧、全部していいよ、無料でということになると、ちょっと危険も感じるものですから、やはりきちっとした情報を流すには、きちっと相手の目的を聞いてから、ぜひさせていただきたいと思っておりますので、その点、今までどおりで結構ですけれども、気を付けてやっていただければありがたいと思います。

○西尾昇治(東京商工会議所常務理事)委員 それから、公文書の開示情報等々につきましても、やはりどういう文書が出てくるかまだ分からない恐怖がありますので、精査できないんですけれども、それの開示のところの分がはっきりしてくる、その辺の区別をきちっとした上での全ての情報公開というようなところはあってしかるべきかなと思っております。

○中村輝子(ジャーナリスト)委員 都の場合はその閲覧手数料その他が使いやすさに対して1つの問題になっているという評価がずっとありました。それで今、藤原先生がおっしゃられたように、まさにパラダイムの転換ということだと思いますけれども、その背景は、まさに税の負担の公平性、つまり、もう少し具体的に言いますと、都には際立っている大量請求、また濫用問題ですね。それの当該部局などへの非常な負担、そこをどうするかというのは、他の自治体もそうでしたが、長いこと懸案になってきているはずなわけです。今、公開性のさらなる向上に対して目が向いておりますが、これまでの理由となっていた負担その他、そこはどう変化してきているのか、もう少し具体的に伺いたいと思います。

 もはや何が言いたいのか理解が難しい意見もありますが、「税の負担の公平性」「税の有効活用」という観点から、閲覧手数料の廃止に対して知事の方針なので反対はしないが、積極的ではない意見が出されています。

 「税の負担の公平性」「税の有効活用」点でいえば、豊洲市場問題で移転していないことに伴い多大に発生している経費、オリンピック経費、筆者が原告になっている新銀行東京への855億円の出資金の棄損など大物案件を東京都は抱えていますが、わかりやすい問題請求者の存在の方が、審議会委員としてはこの税の有効活用・公平負担議論になじむようです。

 この請求者性悪説、行政は苦労している説が根強いことも頭の痛いところです。3月の審議会ではさらにどのような意見があり事務局から説明があったのか、議事録の公開が待たれます。

 なお、不開示決定、不存在決定に対しては審査請求を行う予定です。公文書管理条例案は、審査請求手続中に、条例案の都議会提出後か条例成立後に公開される可能性があると思いますが、情報公開一丁目一番地の政策である情報公開条例改正案と公文書管理条例案に関する情報不開示なので、審査請求は不可欠と考えています。(三木由希子)

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