【報告】キックオフシンポジウム 特定秘密保護法を超えて

News on 7 Jul , 2014

 世界では、政府と市民社会の協働のもとに開かれた政府をつくる試みが進んでいる。日本ペンクラブは、自由人権協会、情報公開クリアリングハウスと共同で、特定秘密保護法という問題を超えて、「開かれた政府をつくるプロジェクト」を始めることとなり、キックオフ・シンポジウムが7月7日、東京の日比谷図書文化館コンベン ショナルホールで開催され、160名を超える人々が参加し、関心の高さを示した。

 冒頭、司会の升味佐江子弁護士(自由人権協会)が「気が重い日が続くが何か見通しが見えればと思います」と述べた。

 開催日時 2014年7月7日(月)18:30~21:00
 開催場所 日比谷図書文化館コンベンショナルホール
 主  催 開かれた政府をつくるプロジェクト
      (日本ペンクラブ×自由人権協会×
       情報公開クリアリングハウスの共同プロジェクト)

 

「開かれた政府をつくるプロジェクト」の紹介

 三木由希子(情報公開クリアリングハウス理事長)

 「開かれた政府をつくるプロジェクト」の構想は、特定秘密法案の審議の最中から考えていた。ただ反対ではなく、どうしたいかを前向きに示し、市民側からメッセージを発信したいと考え、日本ペンクラブ、自由人権協会、情報公開クリアリングハウス三者の共同プロジェクトとしてとりあえず立ち上げ、皆が参加するプラットフォームに発展させていきたいと考えている。

 開かれた政府をつくるためには、自由に批判できる社会、仕組みが開かれ、参加の機会が開かれている、政府・行政の独占ではない「公共」が重要である。利害の調整をオープンに、非公開、秘密で行われている政府の活動を監視・アカンタビリティーの徹底する必要がある。

 

「開かれた政府をつくるプロジェクト」キックオフ宣言

◎「密室で決めたことは決していい結果を生まない」

 浅田次郎・日本ペンクラブ会長

 最近集団的自衛権が閣議決定という密室で決められた。政治的手続きとして大変危険なことと考える。民主主義の二大要件は議員公選制と表現の自由である。立法府による手続きではなく、法解釈を首相の任命した閣僚だけで決めている。密室で決めたことがけっしていい結果を生まないことは歴史が証明している。平和を希求するためにも開かれた政府が存在することが大前提となる。世の中の物質的豊かさのなかで危機感を持つことは難しいが、開かれた政府というはっきりとした要求をもつプロジェクトを作り、広く訴えていくことが重要である。日本ペンクラブもできるだけの活動を行うのでご賛同いただきたい。

◎「これはあるはずだが出てこない情報が多い日本」

 西木正明・日本ペンクラブ副会長

 仕事がドキュメント風の小説を書くのが仕事で、歴史の裏街道を歩いてきたが、情報公開法の恩恵を最も受けている。戦争に負けた時、崩壊した時に情報は公開される。ソ連が崩壊した時がそうであったが、一瞬にして終りプーチン体制になると情報公開がされなくなった。第一次世界大戦でドイツ帝国が崩壊し、ワイマール共和制となり、あらゆるものが自由となったが、これではいけないという動きが最終的にナチズムとなった。情報が自由になるのは逆説的に危険な要素もあることも心がけておかないといけない。日本でも大正期の一時期は、自由があったとも言える。

 この歴史と比較すれば米国の情報公開法は非常に良い。国籍がなくても、大概の情報は手に入る。日本の場合は、これはあるはずだが出てこないという情報が多すぎる。今、開かれた政府という声をあげることが、これらを変えるきっかけになるのではないかと楽しみにしている。

◎開かれた政府、社会をつくるなかで、「国」という言葉を使わないこと

 吉岡忍・日本ペンクラブ専務理事

 文章書きであるが、誰にも使いにくい言葉がある。私にとっては「国」、「国民」である。英語のピープルが「国民」と訳されてしまう。原発は「国策」であるという。このような言葉使いを無意識に使うことは、開かれた政府という考え方を覆い隠すような気がする。「国を訴える」ともいう。これらの言い方は民主主義自体を否定することにつながるのではと危惧している。民主主義で政府は変えられるのに、「国」という表現には運命、連続性が感じられ、我々が縛られているような気がする。「国」という表現は限定的に使いたい。

 「国」という言葉を使わないことにより、何かを変えられるのではないかと思う。開かれた政府、社会をつくるなかで、「国」という言葉を使わないことにより、まず自分自身を変えていこうというのが私の覚悟です。

◎「相手を納得させる対話ができる風土を作るということが、開かれた政府の中核となる」

 紙谷雅子・自由人権協会代表

 表現の自由には自己実現のための表現の自由とともに、自己統治、すなわち情報を皆でチャックし、情報が淘汰されていくことにより真理の探究ができるという要素がある。意見を形成するためには、様々な情報が必要で、情報がなければなにも決められない。よりよいことをするためには、違った情報が必要であり、これも表現の自由の重要な形である。相手を納得させる対話ができる風土を作るということが、開かれる政府の核となる。

 

Open Government Partnership(OGP)とは何か

 ローレンス・レペタ明治大学特任教授

 OGPは2011年に国連総会で米国を含む八カ国で結成された。現在64カ国が参加している。参加国は先進国から途上国まで多岐にわたるため、それぞれの国によりテーマが異なっている。政府のガバナンス強化、公共サービスの改善、政府と市民社会の真の政策対話の実現、市民社会相互の改革などのため、透明性、情報公開、説明責任、技術革新を実現していく。

 OGPのユニークなところは市民社会の役割であって、継続的に参加しなければならないことが明記されている。OGPが加入国に提供するものとしては情報交換、プラットフォームの形成、事務局(サポートユニット)のアドバイス、独立報告メカニズムによる評価があげられる。
毎年総会を開いており、去年はロンドンで11月に開催された。英国のキャメロン首相は熱心で、先日の安倍首相との共同声明で日本が参加の検討をすることが表明された。

 

開かれた政府をつくるための政府と市民社会のパートナーシップ

 ポール・マーセンさん(OGPサポートユニット)

 OGPの公式の事務局で、運営委員会のサポート、OGPの広報・理解促進と独立報告メカニズム(IRM)を担当しているOGPサポートユニットからポール・マーセン氏がベルギーから、インターネットによるSKYPEビデオ電話会議で参加し、日本でOGP参加を目指すプロジェクトを歓迎するとの発言の後、質問に答える形で、開かれた政府をつくるための政府と市民社会のパートナーシップについて語った。

問1 OGPサポートユニットと市民社会コーディネーターの役割は

 サポートユニットはOGPの公式の事務局で、運営委員会のサポート、OGPの広報・理解促進と独立報告メカニズム(IRM)を担当している。

問2 OGPの価値は市民社会と政府の平等なパートナーシップにある。市民社会にとってOGPとは。

 第一に政府と同じテーブルにつくことができる点が大きい。第二に具体的で野心的なコミットメントを市民社会からの働きかけで政府から引き出せる。第三に独立した外部のモニタリングがあり、具体的行動目標を検証できる。

問3 日本の市民社会へのメッセージ

 市民社会が政府に対して政策実現のため、中にはいり政府と一緒に、実務的に、ねばり強く現実的に対応する必要がある。同時に外部からも圧力をかける必要がある。政府の立ち位置を考え、妥協できる、一緒にやれるものを探す。

 市民社会で内輪もめが起こらないようにすることも重要である。戦略的に政府に圧力をかけるためにも市民社会が連携する必要がある。また、他のOGP諸国の市民社会から学び、情報を収集することも役に立つ。

 最後に日本がOGPに参加するのであればOGPサポートユニットとしても最大限の助力を惜しまない。

 

開かれた政府を実現するインドネシアの市民社会の取り組み

 イルハム・B・セノンさん(Transparency International Indonesia)

 OGP発足からのメンバーであるインドネシアから、市民社会と政府の共同作業を進めている国際腐敗防止NGOの現地スタッフでありインドネシアのOGPのコアチームに市民社会側からメンバーとして参加しているイルハム・B・セノン氏が、このシンポジウムのために来日、インドネシアの市民社会の取り組みについて説明した。

 インドネシアでは、OGPは市民社会の課題として出てきたが、大統領のイニシアチブではじまり、そのことには感謝している。政府の高いレベルとの対話が出来ている。

 基本的権利・サービスの向上、幅広いセクター、多様な活動を行ってきた。しかしながら腐敗防止、民主主義を進化させる、人権尊重、社会正義の向上はまだ道半ばである。苦情窓口の設定、環境問題への取り組みなどの成果はあるが、官僚組織の中間層の改革者が不足しており、協力を得るのは難しい。多量の文書が作られたが、具体的変化はゆっくりとしたものとなる。また、結社の自由についても市民団体の登録方法が複雑で、新しい団体が参加しにくいといった課題もある。その結果、情報アクセスが阻害される場合がある。

 日本の皆さんともOGPの経験を共有し、有意義なイニシアチブにしていきたい。

 

真の公共性、皆が参加する公開の場で議論、情報の透明性・公開性を進めるきっかけに

 杉田淳・法政大学教授

 日本の政治は劣化している。前政権では、「新しい公共」として市民社会と国と政治が結びつき、開かれたものにするということが表明された。お上概念をなくすというのは決して「新しい」公共概念ではない。公の場で議論するのは歴史的に公共概念として重要である。ところが現政権の秘密保護法の出し方には問題がある。言論の自由、情報を得る権利にかかわる危険なものであるにもかかわらず、情報漏えいの危険ばかりを述べる粗雑で荒っぽい議論となっている。権力は危険であるということを政府も市民も普遍的に共有する必要がある。政府のやり方は、市民社会の側に拒否反応を起し、市民は対抗、抵抗するばかりとなる。権力は危険だが、新しい政治を政府と協力して行いたいという動きに冷たい水を浴びせている。

 市民の側は、権力への警戒心を持ちつつ、政策実現をどのようにするか、OGPは試みとして重要である。政府の市民との対話のアリバイ作りや、ガス抜きといった場になる危険性があるが、一歩踏み出し、本当の公共性、皆が参加する公開の場で議論、情報の透明性・公開性を進めるきっかけになればよいと考える。

 

閉会の挨拶 3年でかたちを見せたい。

 山田健太(日本ペンクラブ言論表現委員長)

 このプロジェクトは危機感からスタートしている。声の大きい人に負けて、表現の自由、集会の自由が萎縮している。もっともしづらいタイミングの運動かもしれない。

 政府との対話としてOGPの加入を促進する、秘密の監視制度をまっとうなものにし、市民と政府の対話テーブルを作る、地方自治体への働きかけ、見える化の促進、表現の自由の価値を高める市民の間の結びつき、テーマ別のゆるかやかな繋がりで行う。市民とメディアの協業、スノーデンのファイルを引き受けられるジャーナリズム活動を励ましていく。3年で形を見せたいと考えている。危機感と寛容性が両立できる枠組みも大切である。

まとめ 日本ペンクラブ言論表現委員会

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