意思決定過程の記録作成の徹底を求める要望書

 閣議等の議事要旨の作成と公表が2014年度より行われることとなりました。これについて、さらなる意思決定過程の記録作成の徹底を求め、内閣総理大臣に対して要望書を提出いたしました。

 要望書のPDF版はこちらから

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2014年4月8日

 内閣総理大臣 安倍 晋三 様

 

 意思決定過程の記録作成の徹底を求める要望書

 特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス

理事長 三木 由希子

 

 当法人は、市民の知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です。

 閣議・閣僚会議の「議事要旨」の作成・公表について閣議決定により実施することを決定し、この4月1日より「議事要旨」が作成されるようになることは、意思決定過程の記録作成の徹底に向けた第一歩としては、歓迎するものです。

 しかしながら、以下のような重大な問題があり、かつ意思決定過程の記録作成についてはさらなる対応が早急に必要であります。

 

1 閣議・閣僚懇談会の議事要旨のもととなるメモの取扱いが不明

 閣議・閣僚懇談会の記録は、出席者である内閣官房副長官、内閣法制局長官などのメモをもとに作成するとされており、その作成の根拠となったメモの取扱いなど基本的な記録管理が明らかにされていません。2012年の「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」における検討経過で、各国の閣議等の記録作成について調査が行われていますが、イギリスでは、メモに基づき作成される議事録のもととなるメモも一緒に保存され、のちに議事録とともに原則公開とされることとなっています。

 また、閣議・閣僚懇談会については、公文書管理法の改正により作成の義務付けが過去には検討されていましたが、そうした制度的な保障がなく閣議決定により実施することになったことは極めて残念であります。加えて、会議は録音せず、速記せず、メモに基づく議事要旨を作成することとした以上は、その記録が適正に作成されたものであることを跡付けられる記録の保存が、最低限伴うべきと考えます。

 

2 閣僚会議等の議事録等の作成・公開について方針が示されていない

 閣議・閣僚懇談会の議事録作成の検討は、政府全体の意思決定過程に対する説明責任を向上させることが過去においては主目的でありました。中でも、閣議・閣僚懇談会についてはこれまで議事録が作成されて来なかったという経緯から、特に関心を集めたところですが、2012年当時においては、それとともに閣僚会議等(閣僚会議、省議などの、閣僚を構成員として開催される政府の会議)の議事録作成も併せて検討されていたところです。2012年時点で、174の閣僚会議等が存在し、その多くが議事録の作成が可能と2012年11月29日付けの「閣僚会議等に関する調査結果の概要」で報告されています。また、「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」(2012年11月29日 閣議議事録等作成・公開制度検討チーム)では、すべての閣僚会議等に対し原則議事録の作成を求め、議事録を作成しないとする閣僚会議等に対しても議事要旨は作成するよう求めています。

 閣僚会議等は、意思決定の過程における重要な会議であります。これらの議事録の作成と関係資料の一体管理が行うことは、公文書管理法の求めるところ、即ち意思決定過程を合理的に跡付けるための文書を作成すること(第4条)と、相互に密接な関連を有する行政文書をまとめて保管(第5条)することに当たります。閣議・閣僚懇談会とともに、閣僚会議等の議事録作成についても徹底し、その保管・公開を行うことは、政府の高位の意思決定過程の説明責任を果たす上で不可欠であります。

 しかしながら、閣僚会議等についてはルール化などが図られておらず、閣議・閣僚懇談会の「議事要旨」の作成、原則公表だけでそれらを正当化することにはなりません。

 

 以上のことから、次のことを要望いたします。

 

【要望】

  1. 閣議・閣僚懇談会の議事要旨のもととなるメモについて、現段階で廃棄・消去されないよう早急に保全をしてください
  2. 前記の上、現在行っている議事要旨の作成・公表ルールの下で、メモの保存・管理・公開のあり方について、ルール化し、それを公表してください
  3. 閣議・閣僚懇談会は最高の意思決定、意思形成の場であるので、その議事録の作成・公開等については法律をもって行うよう、公文書管理法の改正等必要な対応をしてください
  4.  閣僚会議等については、早急に議事録の作成を義務付けるよう、公文書管理法の改正、行政文書管理ガイドラインの改正、各行政機関の行政文書管理規則の改定などの対応を行ってください
  5. 前記の上、議事録と関係資料等の一体管理と、保存期間満了後に国立公文書館等への移管を行うことを行政文書管理ガイドライン及び各行政機関の行政文書管理規則の改定を行ってください

以上

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