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【お知らせ】日隅一雄・情報流通促進基金の大賞を受賞しました

 昨年亡くなられた弁護士でジャーナリストの日隅一雄さんの生前の志と仕事を発展させ、表現の自由・情報公開・国民主権の推進のための取り組みを行っている「日隅一雄・情報流通促進基金」の第1回大賞に、情報公開クリアリングハウスが選ばれました。

 日隅さんの命日でもある6月12日に授賞式が行われ、以下の通りごあいさつ申し上げました。

 多くの方のご支援でここまで活動を続けてきた結果であり、深く感謝申し上げます。それとともに、今後も、福島第一原子力発電所事故の情報公開プロジェクトを進めつつ、さらに市民の知る権利の強化のための取り組みを進めていきたいと思いますので、引き続きご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。

【授賞式 あいさつ】

 このたびは、日隅一雄・情報流通促進基金の大賞に選んでいただき、深く感謝しております。また、今日は日隅さんの命日ということで、この日に多くの人々が集まり、新たな出会いや気づきの機会を旅立ってもなお私たちに与えてくれることに、感謝したいと思います。

 情報公開クリアリングハウスは、前身を「情報公開法を求める市民運動」と言います。1980年に、国に情報公開法を作らせる活動をするために発足し、1999年の情報公開法の制定を機会に組織改編をしましたが、足掛け33年、公的機関の情報公開を進め、市民の知る権利の確立を目指して活動をしてきました。

 私たちの出発点には、薬害や公害による被害、密室で物事が決まることの理不尽さ、真相究明の進まない汚職事件、公費の濫用など、市民が情報から遠ざけられてきた中で引き起こされてきた数々の問題がありました。被害救済も真相究明も、市民参加も情報公開なしには進みません。情報公開を求める権利は切実な問題でした。また、情報公開が進むことで、こういう問題が起こらない、そういう社会になってほしいという思いもありました。

 いま、情報公開法が制定され、情報環境も激変し、30年前に比べればアクセスできる政府の情報量は格段に増えました。しかし、福島第一原子力発電所の事故は、本質的なところはあまり変わっていなかった、という現実を再認識させられました。そこで今だからこそ私が立ち戻らなければならないと思う一文があります。1981年に市民運動が採択をした「情報公開権利宣言」です。

情報公開権利宣言 抜粋

「国政は国民のものである、という極めて平凡な真理にもかかわらず、国民主権の原理に反して、重要な国政情報は長いあいだ国民から遠ざけられてきた。その最も大きな原因は国民主権に本来内在する国民の知る権利が無視されてきたからである。国民の目と耳が掩われ、基本的な国政情報から隔離されるとき、いかなる惨禍に見舞われるかは、過去の戦争をとおして私たちが痛切に体験したところである。
 すでに周知のように、公害・薬害等により国民の生命、健康、安全は脅かされ傷つけられてきたが、政府省庁による情報の不当な操作や秘匿がなければ、それらの原因は速やかに究明され被害も最小限にくいとめられていたはずである。さらに、ロッキード事件をはじめ頻発する高官汚職や公費の乱費も、密室政治を原因とするものであり、いまなお真相は濃い霧のなかにある。これが国民を主権者とする国政と呼べる状況であろうか。
 現代国家の特徴とされる行政権力の著しい強化と肥大は、今日のいわゆる情報化社会において、いよいよ政府による情報の独占と管理とを決定的なものとするにいたった。しかし、これらの公的情報はもともと国民の共有財産であり、公開のもとにおくことが、国民に奉仕する政府の当然の責務にほかならない。」

 ここに書かれていることは、今でも古びていないと思っています。言い換えるならば、30年前も今も、向き合わなければならない問題は、形は変わっても同じであるということだと思います。

 今、かつての薬害や公害が、情報非公開や因果関係の証明で救済が遅れ、なおいまだに争いがあるという教訓を踏まえ、福島原発事故の情報公開プロジェクトに取り組んでいます。原発事故の影響は、数十年先を見越していかなければなりません。かつては情報公開法がありませんでした。今は法律があります。どのような影響が及ぶかは、予測・推測ができることともある一方で、絶対的な結論もない状況だと思っています。だからこそ、今、それぞれできることをしていく必要がある、そして私たちにできることは、政府や自治体に対して今、現に行われている対応、政策などの情報の公開を求め、それを公表し、さらには後世にアーカイブとして残していくことであると考え、福島原子力発電所事故情報公開プロジェクトを始めました。限りなく地道で地味なものですが、今と未来をつないでいくために、今のこの場所にとどまり、できる限り続けていきたいと考えています。

 今回の受賞は、このような私たちの活動を評価していただき、大変勇気づけられ、また自分たちの活動の意味を再確認いたしました。

 情報公開は、それが最終目的ではありません。あくまでも手段であり、出発点にすぎません。情報公開を求めるときは、必ず公開された情報を必要とする目的があります。情報は公開され、活用されなければ本来の意義が発揮できません。だからこそ、情報が公開されるかどうかに焦点が当たっている段階は、次の行動のスタート地点にまだ立てていないということでもあります。早くスタート地点に立って、中身のことを議論しよう。日隅さんのいっておられた「情報流通促進」にはそんなメッセージが込められているのではないかと考えています。

 今後、原発事故もそうですし、少子高齢化社会といわれ、社会の姿が激変していく中に私たちは生きていきます。20年後、30年後に壮大な答え合わせが待っています。 誰かの犠牲や被害がなければ変えられない、変われないということを越えて、情報公開や情報流通が、今と未来をつなぐ議論を下支えしていくものとしてさらに進めていくために、皆さんと一緒に努力をしていきたいと思います。

理事長 三木 由希子

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