福島県県民健康管理調査検討委 第1~3回議事録改変の経過


福島県県民健康管理調査検討委員会の第1~第3回会議は非公開で行われ、当初、議事録も公開されていなかった。

県民からの情報公開請求を受けて、第1~第3回の議事録が公開され、あわせて県のホームページでも公表された。その後、検討委員会秘密会議問題などで、県民健康管理調査検討委の議事の公正性や情報公開の姿勢に対して疑問が呈される中、今度は当初公開された第1~3回の議事録が、情報公開請求を受けた後に、不存在だと問題になると考えた県が作成し公開していたことが判明した。さらに、議事録を作成する過程で、当初の案から大幅に改変した議事録を公開していたことが、県から公開された文書により明らかになった。

情報公開請求により公開された文書は、①第1~3回の最初に作成された「議事メモ」の検討委事務局修正案、②県庁内関係各課回覧で修正されたもの、③委員からの修正案、④修正個所を反映した上での議事録、⑤検討委員会委員に内容の確認をした際のメール、などだ。

2012年4月9日に検討委員会各委員にあてて送られた県庁担当者からのメールでは、「1~3回の議事録は作成していないとのスタンスでしたが、今般の議事録問題も踏まえ、議事メモとして開示せざるを得ない状況です」とある。また、県庁内関係各課で回覧した際の鑑では、「これまで、問い合わせに対し、議事録は作成していない。メモ程度のもので対応。このたため「議事メモ」として開示することとしたい」とあり、「保存してあった議事メモについて、内容の整合性?を図った」との記載がある。

この「議事メモ」が事務局修正段階のものを指すとすると、議事録に相当するものを作成していながら、県は議事内容を記録したものを公文書としては持っていないと対外的に説明をしていたと考えられる。また、このメールでは「議事メモとして開示をする」としていたものは、最終的には内部での議事録確定段階では「議事録」とされ、それが請求者に公開され、ホームページでも公表された。

この議事録は三段階の修正を経ている。第一段階が事務局の修正案。その後、庁内関係各課で回覧される中で修正された案。その修正案が検討委員会委員に送付されてさらに修正された案だ。この作業の中でどのような議事内容の記録が変遷を遂げているかをまとめたのが、以下の表である。

第1回福島県県民健康管理調査検討委員会議事録修正経過表
第2回福島県県民健康管理調査検討委員会議事録修正経過表
第3回福島県県民健康管理調査検討委員会議事録修正経過表

当初公開の議事録から主に記載が削除されていたのは以下の内容。

◆ホールボディカウンター(WBC)と尿検査

第2回会合で議論されていたのが、WBCと尿検査の実施について。事務局の「安全だけでなく、安心の問題。福島市・郡山市・二本松市説いたところに収まらない。尿については、ある首長に話したがメジャーになっていない。WBCでないとだめだという固定観念がある」という意見に対し、オブザーバー参加の内閣府は「合理的には尿だと思うが、WBCはバス移動が機器の圧迫感などのストレスがある。負担感は尿の方が少ない。尿を本流に位置付けるようにすべきではないか」と発言。それに対し事務局は「尿検査よりもWBCを皆が言っている状況で、尿に舵を切れない」と返している。

これらの議論の経過を受けて安村委員は「尿は活用するというのが、検討委員会での結論では」と発言をしているが、これは県庁内での2度目の修正で削除をされている。

また、阿部委員は「尿が中心なのか、WBCが中心なのか。2,800人やったら、次々要望が上がるのが目に見えている。今後の内部言被ばくの評価をどうするかという問題。ただ、WBCをやればよいということではない。」と発言している。星委員は「WBC2,800人、尿100人では、WBCの方が良いというイメージになる。200万全県民WBCというばかげた議論になってしまう。安心を与えるためにやるのに、結果が逆になってしまう」「基本調査で線量評価は足りるという言わないと、基本調査への協力が得られなくなる。皆WBCでやればよいとなる」と発言。明石委員は「WBCが取りざたされすぎている。WBCで何でも分かるというような世論に警告を出す必要がある」などと発言している。

安村委員は「問題は、県民に線量評価をすることが伝わっていないこと。調査票の記入は面倒。1割もWBCをやったら、皆、調査票を記入しなくなる。きちんとしたメッセージは出すべきでWBC2,800人は反対」と発言し、山下座長は、「線量が高い地域の住民の内部被ばくと外部被ばくを評価していないことが問題」と発言している。

これらの議論の方向性を端的に表しているのが、検討途中での山下座長の発言「この委員会は外部被ばくが中心で、内部被ばくはサブ」という認識ではないかと思われる。

◆線量評価サイトは否定的

第1回会合でオブザーバー参加をしている文部科学省から、「ホームページでの線量評価サイトも作った。県外の方々をいちいち探し出すのは難しいので、そういったものも活用していくべきではないか」という発言が修正前の議事録には記載されていたが、当初公開議事録では削除されていた。また、第2回会合では、明石委員が「webでの線量推計は、この健康調査の前にはやらない。将来的には、県外者への対応に限っての活用などを想定している」と発言したことも当初公開の議事録からは削除されていた。

◆会議非公開をめぐる議論

第2回会合冒頭では、報道機関が傍聴する中、会議公開・非公開について議論をしていたことが当初の議事録からは削除されていた。非公開について、星委員が「本調査について委員の共通理解が進んでいない中で、自由な発言が妨げられることはいかかが。本日は非公開でどうか」と発言。神谷委員も公開を原則としつつ、今回についてはと同調。児玉委員も将来に向かっては公開としつつ、今回は非公開に同調。結果的に、第2回も非公開で開催された。

【公開文書】

○当初議事メモと事務局修正
第1回県民健康管理調査検討委員会議事メモ(当初案の見え消し修正)
第2回県民健康管理調査検討委員会議事メモ(当初案の見え消し修正)
第3回県民健康管理調査検討委員会議事メモ(当初案の見え消し修正

○事務局修正案に対する県庁各課修正
県民健康管理調査検討委員会議事録庁内関係各課内容確認依頼
第1回県民健康管理調査検討委員会議事メモ(事務局修正案の再修正)
第2回県民健康管理調査検討委員会議事メモ(事務局修正案の再修正)
第3回県民健康管理調査検討委員会議事メモ(事務局修正案の再修正)

○検討委員会委員による修正
県民健康管理調査検討委員会議事録確認メール(委員あて)
山下座長 県民健康管理調査検討委員会議事メモ修正(第2回分)
児玉委員 県民健康管理調査検討委員会議事メモ修正(第2・3回分)

○当初公開議事録決裁
第1~3回県民健康管理調査検討委員会 当初公開議事録決裁

関連情報  福島県「県民健康管理調査」検討委員会の第1~3回議事録

開示請求日 2012年10月7日
開示決定日 2012年11月19日
決定者 福島県知事
決定内容 一部非公開(委員のメールアドレス)
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