【調査】東京都の文書保存期間 50%以上が1年以下であることが判明

 東京都が現在、公文書管理条例の制定に向けて概要案を公表し、パブリックコメントを実施中です(4月26日締め切り)。

 都道府県ではこれまで4例しかない公文書管理条例を東京都が制定するという方針は、歓迎をしています。しかし、条例を制定すればどんな内容でもよいというわけにはいきません。

 公表されている概要案では実際にどのような制度を作るのかがよくわからないうえ、現状の文書管理制度がどのような実態なのかなどの参考資料が一切公表されていません。加えて、2017年4月に施行した改定した文書管理規則も未公表(公報に改正箇所がどこかのみ公示されています)です。そのため、どのような課題や実態に対して、条例がどのように具体的に影響を与えるのかが不明なため、現状、どのような文書管理の実態にあるのか、公表されて入手可能な情報から整理をしてみました。

 東京都の文書保存期間の調査結果(暫定版)

 ここで分析したのは、知事部局の各局の文書検索目録です。目録には455,985件の文書の保存期間が設定されていました(ここでいう文書の保存期間とは、文書の種類ごとの保存期間という意味です。)。そのデータを集計した結果、全体の52.74%が1年未満または1年の保存期間文書となっていました。


*生活文化局の文書検索目録には、1、3、5、10と数字のみ記載の保存期間があったが、いずれも1年、3年、5年、10年と保存期間を読み替えた
*福祉保健局には保存期間に「-1」と記載のあるものが9件あったが、いずれも「1年未満」に読み替えた

  • 1年、1年未満の多いところは産業労働局、オリパラ準備局


 グラフを見てもわかる通り、各局ともおおよそ1年未満、1年の保存期間文書で半数を超えています。もっとも1年未満、1年保存の区分が多かったのは産業労働局、次いでオリンピック・パラリンピック準備局でした。オリパラ準備局といえば、情報公開のあり方が問題になっているところです。文書の保存期間も短かいので、文書類が情報公開するか否か以前にどこまで残るかちょっと心配です。

 公文書管理条例の制定の方針に多大なる貢献をした豊洲市場問題を抱える中央卸売市場には、意外ですが1年未満という保存区分はありませんでした。その代り1年保存が51.03%でした。

 1年未満の保存期間の割合が多かったのは、情報公開条例を所管している生活文化局で29.64%、次いでオリパラ準備局の28.54%。

  • 1年未満保存文書は何か


 文書検索目録によると、「軽易な資料等」「その他資料」「簡易なもの」としてるものを1年未満としているものが多いです。何かの事務や事業について3年、5年、長期などの区分に入らないものを、1年未満の軽易な資料等としています。何が軽易なのかなどは、特に基準は示されていません。

 例えば、建設局出先事務所では、用地の折衝記録を1年未満としている例もありました。折衝記録は長くても1年としているものが目立ち、契約の完了など事案が完了するまでは持ち、その後は1年未満ないし1年で廃棄できるようです。森友学園への用地売却経緯が1年未満保存で契約とともに廃棄したという財務省の説明と同じような状況が、東京都にもあるようです。

  • 77.47%が3年保存まで


 文書検索目録によると、保存期間は1年未満、1年、2年、3年未満、3年、4年、5年、7年、8年、9年、10年、15年、20年、30年、35年、99年、長期というものがありました。

 保存期間が1年未満から3年という短期間のものは、全体の77.47%ありました。ほとんどの文書区分が3年以内に保存期間の満了を迎えることになります。もっとも3年までの文書区分が多いのが産業労働局で86.95%、次が青少年治安対策本部の81.34%、中央卸売市場が80.22%、政策企画局の80.19%となります。ちなみに、オリパラ準備局の79.83%です。

 東京都では、長期の保存文書は公文書館に引き継ぐことを原則としていますが、それ以下のものは廃棄されていきます。多数の文書が、3年以内に消えていくことがわかります。

  • 公文書館への引継ぎがされているか疑問


 では、長期文書となっているのはどれくらいかというと、全体の1.73%でした。各局でばらつきがあり、主税局は0.46%、産業労働局は0.48%ととても少ないです。比較的多いのが、総務局の3.33%、建設局の3.26%、都市整備局の3.03%、港湾局の2.97%です。ハード面の整備を所管しているところに長期文書が多い傾向があります。

 中央卸売市場は1.02%と少ない、オリパラ準備局は1.83%で平均、というところです。

 その長期文書はちゃんと公文書館に引き継がれているのかは、なんとも評価しがたいところです。「東京都公文書館年報」によると、2007~2015年度の間に公文書館に引き継がれた文書の約77%が、総務局、財務局、福祉保健局、建設局、土地収用委員会事務局からのものでした。青少年・治安対策本部は9年間で96件、会計管理局は108件、オリパラ準備局は136件、病院経営本部は172件、環境局は178件です。9年間でこの数字なので、とても少ないように思います。

 引き継ぎ文書が少ないのは、長期文書が非常に少ないのか、それとも引継ぎがされていないのかいずれかで、後者の可能性が高いですが、いずれにしても長期文書が適切に残されているのか確認が難しい状態にあります。

  • 99年保存文書?


 文書検索目録から、99年という保存期間を指定している文書が見つかりました。同種の文書が別の局課では長期になっていたり、もっと短期間の保存期間のものもありました。99年保存というのは妥当かどうか検討が必要ではないかと思われます。

 詳細は報告書をご覧ください。

 東京都の文書管理のあり方は、実際の保存期間のつけ方や運用を数字で見ていくと、いろいろ課題がありそうです。公文書管理条例の制定がこのような課題の解決にどのように役立つのか、明らかではないので、課題の認識、特定、条例による解決という道筋をしっかり示すよう、東京都に対して求めて行きましょう。

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